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原子計算が予測、InGaNにホウ素添加でLED効率向上

November, 27, 2017, Ann Abor--ハイパワー白色LEDは、試合がある日にスタジアムが直面するのと同じ問題に直面する。小さすぎるスペースに人が多すぎる。LED内部では、人ではなく電子。LEDの効率を高く保つために多すぎる電子は、相互に避けあって、衝突を最小化する必要がある。NERSCコンピューティングファシリティの原子計算とハイパフォーマンススーパーコンピュータを用い、ミシガン大学の研究チームは、広く利用されているInGaN材料にホウ素を添加することで、LED内の電子の混雑を防ぎ、材料をより効率的に発光するようにできることを確認した。
 現在のLEDは、交互に成長させた異なる半導体材料でできている。最もシンプルなLED3層。1つの層の材料には余分な電子が入っている。もう一つの層は、電子が非常に少なく、電子が入る空隙はホールと呼ばれている。2つの層に挟まれた薄い中間層が、LEDが放出する光の波長を決める。電流を印加すると電子とホールが中間層に入り込み、そこで結合して光を放出する。しかしLEDの発光量を増やすために中間層に電子を多く詰め込みすぎると、電子は相互に衝突し、ホールと結合して発光することにならない。この衝突は、電子エネルギーを熱に変える。このプロセスはオージェ(Auger)再結合と呼ばれており、LEDの効率を低下させる。
 この問題を回避する方法は、中間層を広げて電子(とホール)が動き回れるようにすることである。層が厚くなると、電子は広い空間に広がり、相互衝突回避が容易になり、衝突によるエネルギー損失が減る。しかし、この中間LED層を厚くすることは、言うほど簡単ではない。
 LED半導体材料は結晶なので、結晶を作る原子は、特定の決まった距離で相互に離れていなければならない。結晶における原子の決まった間隔は格子定数と言う。結晶材料が交互に層形成されると、原子の決まった配列が調和して材料が結合するには、その格子定数は同じにならなければならない。そうでなければ材料はその下の層との整合が変形する。わずかな変形は問題ないが、最上層が厚くなりすぎ、変形が強くなりすぎると、原子の非整合が大きくなり、LEDの効率が低下する。今日の青色と白色LEDで最も一般的な材料は、GaN層に囲まれたInGaN。残念なことに、InGaNの格子定数は、GaNに整合しない。電子の衝突という問題を減ずるには、もっと厚いInGaN層を成長させることになる。
 研究チームは、中間InGaN層にホウ素を入れることで、その格子定数がかなりの程度GaNと同じになり、あるホウ素濃度で完全に同じになることを発見した。さらに、材料に全く新しい元素が加わっても、BInGaN材料による発光波長はInGaNの波長に非常に近く、可視スペクトルにより異なる色に調整できる。このことは、BInGaN材料はより厚い層の成長に適していることを示しており、電子の衝突が減り、可視LEDの効率が向上する。
 この材料は、より効率的なLEDの製造にとって有望であるが、研究室で実現できることが重要である。研究チームは、BInGaNは既存のInGaN成長技術を使ってGaN上に成長できることを示した。これにより、迅速なテストが可能になり、LEDにこの材料を使用することができる。とは言え、この研究を適用する第1の課題は、InGaNにホウ素を大量に入れる最適な方法を微調整することである。しかし、強力で効率的、同時に安価な新しいLED作製を研究する研究者に今回の研究は素晴らしい方法を提供するものである。