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ETH Zurich、世界最短パルス、43アト秒レーザを開発

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November, 8, 2017, Zurich--チューリッヒ工科大学(ETH Zürich)の研究チームは、X線レーザをわずか43アト秒まで短パルス化することに成功した。1秒の数京分の1の領域の時間分解能で、化学反応中の電子の動きを初めてスローモーションで観察することができるようになる。
 化学反応中の動力学を完全に理解するためには、研究者は原子や分子の全ての動きを基本的な時間スケールで研究しなければならない。
 分子は、ピコ秒領域で回転し、その電子はフェムト秒領域で振動、また電子はアト秒領域で動く。ETHのHans Jakob Wörner教授グループは、世界最短レーザパルス、わずか43アト秒の生成に成功した。もっと一般的に言うと、このレーザパルスは、人間がこれまでに実現した最短制御イベントである。研究チームは、分子内の電子がどのように動くか、あるいは化学結合がどのように形成されるかを極めて詳細に観察することができる。
 赤外レーザから出発して研究チームは、極めて大きなスペクトル帯域で軟X線(SXR)レーザパルスを生成する。その結果、リンや硫黄を含む様々な元素を、その内核電子を励起することで、直接観察することができる。両方の元素とも生体分子に存在しており、今では前例のない時間分解能でそれらを観察できる。
「電荷移動が起こるのが速ければ速いほど、反応はますます効率的に進行する」とWörner教授は言う。例えば人の眼は、フォトンを神経信号に変換する場合、極めて効率的である。網膜の視覚細胞、ロドプシンでは、網膜の感光性分子は、その構造が単一のフォトン吸収により急速に変化するように予め決められている。これにより、薄明かりでも視覚過程が可能になっている。著しく遅い反応であれば、視覚は不可能になる、フォトンのエネルギーがわずか数ピコ秒で熱に変換されるからである。
 アト秒分光計は、より効率的な太陽電池の開発に寄与する。太陽光による励起のプロセスを電気生成まで初めて段階的に追跡できるようになるからである。電荷移動パスの詳細な理解は、次世代感光性素子の効率最適化に役立つ。
 Wörner教授によると、アト秒レーザ分光学は単に観察に適しているだけではない。化学反応の直接操作も可能である。レーザパルスを用いて、反応の過程を変えることができる。分子のある位置で、電荷シフトを止めることによって化学結合でさえも壊すことができる。そのように化学反応への標的を定めた介入は、これまでは不可能だった、以前は分子内の電子の動きの時間スケールが達成されていなかったからである。
 同教授のグループは、次の世代の、さらに短パルス化したレーザに取り組んでいる。これにより、一段と詳細な画像でさえも記録できるようになる。より広いX線スペクトルによって、以前よりももっと多くの元素がプローブできるようになるからである。いずれ、さらに高い時間分解能で、より複雑な分子の電子移動を追跡できるようになる。