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Science/Research 詳細

可視光・近赤外光照射により自ら水素を高効率生成

September, 29, 2017, 大阪--大阪大学産業科学研究所の真嶋哲朗教授、藤塚守准教授らの研究グループは、黒リンとグラファイト状窒化炭素(g-C3N4)の二成分からなる複合体を用いた光触媒を開発し、この光触媒を使用すると可視光・近赤外光の照射によっても、水から水素生成が効率よく起こることを世界で初めて見出した。この触媒は金属を全く使用していない、環境に好ましい、完全金属フリーの触媒。
 従来の光触媒では、太陽光に4%程度しか含まれていない紫外光を利用するため、水から水素への太陽光エネルギー変換効率は低く、実用からは遠いという問題があった。
 今回、研究グループは、紫外・可視光のみならず近赤外光にも強い吸収をもつ層状の黒リンと、数層からなるg-C3N4との二成分からなる複合体を合成した。この複合体に可視光・近赤外光を照射すると、複合体の光触媒作用によって、水から水素が効率的に生成する。この複合体において、黒リンが可視光・近赤外光に応答する光増感剤として働き、また、g-C3N4が可視光に応答する光増感剤として働く。黒リンとg-C3N4はともに層状構造のためその界面を形成しやすく界面間での電荷移動が容易になり、その結果電荷分離が効率的に進行する。特に、黒リンとg-C3N4との界面にP-N結合が生成して電子捕捉部位となり、水から水素が生成することが、世界で初めて明らかになった。
 この可視光・近赤外光駆動型で水から水素を生成する光触媒は、金属を全く使用しない完全金属フリー光触媒としては世界初の例。新しく開発した黒リンとg-C3N4の複合体を光触媒として使用することによって、太陽光からの広帯域波長光※7を利用して、水からの水素製造が可能になった。
 研究成果は、Journal of the American Chemical Societyに、公開された。