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ブラウン大学、必要に応じて分解できる3Dプリント生体材料を開発

September, 12, 2017, Providence--生体適合化学トリガーによって分解可能な仮設構造物は、刺激に動的に反応する生体材料となり、微小流体素子作製、人工組織のパターニングに有用である。
 ブラウン大学の研究チームは、オンデマンドで分解できる3Dプリント生体材料を造る技術を実証した。これは、複雑なパターンの微小流体デバイスの作製、実験中に動的変化が可能な細胞培養に有用である。
 工学部准教授、Ian Wongは、「ポリマーを結合して3Dプリント構造を造り、生体適合条件下で何度もしずかに分離できる、Legosのようなものだ」とコメントしている。
 ブラウンのチームは、ステレオリソグラフィ3Dプリンティングを使って新しい分解可能な構造物を作製した。同技術はCADシステムによって制御されたUVレーザを使い、感光性ポリマー溶液表面にパターンをトレースする。光によってポリマーは結合し、溶液から固体3D構造を形成する。そのトレースプロセスは、対象物全体が底辺から構築されるまで繰り返される。
 ステレオリソグラフィプリンティングは通常、共有結合でつながる感光性ポリマーを使う。共有結合は、強力であるが、不可逆である。この新しい研究では、研究チームは、潜在的に可逆的なイオン結合で構造を形成しようとしたが、光ベースの3Dプリンティングで初めてこれが可能になった。そのために、研究チームは、アルギン酸ナトリウムで先駆体溶液を作った。アルギン酸ナトリウムは、イオン架橋ができることで知られる海草から抽出した化合物である。
「ポリマー間の連結は、イオンが除去されればバラバラになるという考えは、全てのイオンを取り込むキレート結合を加えることで可能になる。この方法で、われわれは望む時に消し去ることができる過渡的構造を形成することができる」とWongは説明している。
 また、イオン性塩、マグネシウム、バリウム、カルシウムなどの多様な組み合わせを使って、剛性が変わる構造を造ることがで、様々なレートで分解できる。
 研究チームは、そのような過渡的アルギン酸構造が有用である点をいくつか示している。
「アルギン酸を使ってチャネル形状をプリントし、次にその周りに第2の痛い材料を使って永久構造をプリントする。さらに、アルギン酸を消し去るだけで中空チャネルができる。切断や複雑なアセンブリは何も必要ない」とThomas M. Valentinは説明している。
 研究チームは、分解可能なアルギン酸構造は、生きた細胞を使う実験で動的環境を作るために役立つことも示した。人の乳腺細胞で囲まれたアルギン酸バリアで一連の実験を行い、バリアが解消されるとその細胞がどのように移行するかを観察した。この種の実験は、創傷治癒過程、ガンにおける細胞移動の研究に役立てることができる。
 実験では、アルギン酸バリアもその分解に使うキレート結合も、細胞に対する感知できるほどの毒性がないことを示した。このことは、分解可能アルギン酸バリアは、そのような実験の有望なオプションであることを示唆している。
 アルギン酸の生体適合性は、人工組織や臓器のためのスカフォールド作製を含め、将来のアプリケーションにも有望である、と研究チームは指摘している。