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Science/Research 詳細

デジカメでX線を計測し、元素分析・イメージングを行う技術を開発

April, 11, 2017, つくば--NIMSの研究グループは、通常の可視光用途のデジタルカメラをほぼそのまま用いながら、画像処理によりX線スペクトルを測定し、元素分析や元素イメージングを行う新技術の開発に成功した。
 物質・材料研究機構(NIMS)先端材料解析研究拠点 高輝度光解析グループの桜井健次グループリーダーと趙文洋ジュニア研究員は、通常の可視光用途のデジタルカメラをほぼそのまま用いながら、画像処理によりX線スペクトルを測定し、元素分析や元素イメージングを行う新技術の開発に成功した。この研究成果により、X線分析はこれまで以上に手軽に行えるようになり、一層広い分野でいつでもどこでも使えるようになると期待される。
 物質はさまざまな元素から構成されており、その組成によって物理的・化学的性質が大きく左右される。このため、物質の理解や新材料開発のために、含まれている元素の種類や量を分析することは重要である。物質にX線を照射した際に出てくる蛍光X線のエネルギーから元素の種類が、その強度から量がわかることが知られている。この蛍光X線分析を行うためには、専用のX線分光器やX線検出器が用いられている。さらに通常の分析に加え、どの元素が試料内のどの場所にあるかを調べる場合には、より高価な検出器や光学素子が必要だった。
 研究チームは、光学顕微鏡などに搭載されることの多い可視光用のCMOS素子を搭載したデジタルカメラをほぼそのまま利用して、蛍光X線による元素分析やイメージングを行う方法を見出した。まず、レンズとセンサの間に、X線のみを透過させる不透明な薄い窓を取り付ける。試料から出てくる蛍光X線が、この窓を通ってCMOS素子に入ると電荷が作りだされる。作りだされた電荷の数を瞬時に計測すると、入ってきたX線のエネルギーを知ることができる。ただ、生じた電荷は複数の画素に別れて記録され、また、ある時は失われてしまうこともある。そこで、電荷の複数画素への分散状態を調べ、本来持っていた電荷量と入射位置の両方を画像処理により復元する方法を確立した。これにより、信頼性の高いX線スペクトルが安定に取得できるようになった。実際に今回開発した手法でお皿を蛍光X線分析した。青の顔料が塗られている表側からのみコバルトが検出され、裏側からはコバルトは検出されなかった。
 研究チームは、さらにピンホールカメラの原理を利用し、その元素がどのように分布しているかを画像化することにも成功した。今後は元素の移動を可視化する動画像の取得に活用し、化学反応の過程を追跡する研究などで材料開発に貢献したいと考えている。
(詳細は、www.nims.go.jp)