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LEDスクリーンを改善する新しいバイレイヤ材料

February, 21, 2017, Lawrence--カンザス大学ウルトラファストレーザラボ(Ultrafast Laser Lab at University of Kansas)の研究チームは、原子厚の二硫化モリブデン(MoS2)と二硫化レニアム(ReS2)層を結合した材料の作製に成功した。
 カンザス大学物理学/天文学准教授、Hui Zhao氏は、「両方とも半導体として非常によく光を吸収する。また非常に柔軟であり、延ばしたり圧縮したりできる」と説明している。「この研究の目的は、数ナノメートル厚の極薄で曲げることができる柔軟性を持つLEDsなど、発光デバイスの実現である。このバイレイヤ(二重層)材料により、目標達成が可能であることを示した」とコメントしている。
 Zhao氏は、新しい材料における電子の振る舞いを教室のアナロジーで説明する。
「材料を、学生がいっぱいの教室と考えることができる。学生は電子、椅子がホール。発光デバイスのための良い材料を作るにはエネルギーを運ぶ電子だけでなく、電子が収まる椅子、つまりホールが必要になる」。
 これまでのいくつかのグループの研究は、電子と「椅子」(ホール)が別々の原子層に存在した。
「電子が簡単に椅子を見つけられないので、これらのバイレイヤ材料の発光効率は非常に低く、1原子層と比べると100倍以上効率が悪い」と同氏は説明している。
 新しい材料では、「全ての電子と椅子が、最初のレイヤにあり、離れていない。よって発光は非常に強くなる」。
 研究チームは、グラフェン作製で開発されたものと同じローテク「スコッチテープ」法を使って新しい材料を作製した。
 研究チームによると、最も難しいステップは、MoS2層をReS2の上にスタックすること、1µmよりも高精度にスタックする。原子厚シートは、いわゆるファン・デル・ワールス(van der Waals)力で結合されている。「ファン・デル・ワールス力は、原子配列の影響をあまり受けないので、この原子シートを使って、原子のレゴのように、多層材料を作ることができる」とフェロー研究者Matthew Bellusは説明している。
 サンプルができると、研究チームは超高速レーザを使って、2つの原子層間の電子と椅子(ホール)の動きを観察した。電子と椅子の両方ともMoS2からReS2へ移動できるが、逆方向はできない明らかな証拠を確認した。
 こうして研究チームは理論計算を確認し、MoS2とReS2で形成されたバイレイヤが、LED技術の基盤として有望であると予測した。
「いずれ、もっと薄くて、エネルギー効率がよく、曲げることができるLEDsができる」と研究チームは考えている。