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独自の視覚刺激が新たなアルツハイマー病治療の可能性

December, 26, 2016, Cambridge--特殊周波数で点滅するLED光を使用することで、MIT研究チームは、ネズミの大脳皮質で、アルツハイマー病に見られるβアミロイドプラークを著しく低減できることを示した。
 この処置は、ガンマ振動として知られる脳波を誘導することで効果があると考えられる。これが脳がβアミロイドの生成を抑制し、プラークを破壊する細胞に生気を与えることを助けることを研究チームは発見した。
 同様のアプローチがアルツハイマ患者に役立つかどうかを判断するにはさらなる研究が必要になる、とMITの神経科学Picower 教授、Li-Huei Tsaiは話している、。
「これは大きな仮定(if)だ、これまで非常に多くのことがマウスでは有効だったが、人間では失敗しているからだ。しかし、もし人がこの処置に反応してマウスと同じようにふるまうなら、潜在力は非常に大きい、それは非侵襲的であり、非常に便利だからである」と同氏は続けている。
 「この重大発表はアルツハイマ病の理解と処置でブレイクスルーを告げるものかも知れない。MITの研究者は、この脳障害とそのメカニズムの研究で全く新しい方向に道を開いた、そのメカニズムはアルツハイマ病を起こし、阻止する可能性があるもので、非常に素晴らしい発見である」とMITの学長、Michael Sipserは話している。
 アルツハイマ病患者は米国に500万人以上いる。この病気の特徴はβアミロイドプラーク。これは脳細胞に有害であり、正常な脳機能を妨げると考えられている。以前の研究は、アルツハイマ患者はガンマ振動も弱めることを示唆していた。この脳波、25~80Hzであり、正常な脳機能、注意、認識、記憶などに寄与すると考えられている。
 アルツハイマが発展するように遺伝的にプログラムされたマウスの研究では、プラークの蓄積、行動上の症状はまだ見られなかったが、研究チームは、マウスが迷路を走っている間、学習や記憶にとって重要な行動パタン中に十分に機能しないガンマ振動を発見した。
 次に研究チームは、記憶の形成や呼び出しで重要な、脳の海馬でガンマ振動を40Hzで刺激した。この最初の研究は、光遺伝学という技術に依存している。これによって、研究チームは光を照射することで遺伝的に変えたニューロンの活動を制御できる。このアプローチを使い、研究チームは、介在ニューロンとして知られるある脳細胞を刺激した。これが次に興奮性神経細胞のガンマ活動に同期する。
 1時間の40Hz刺激後、研究チームは、海馬のβアミロイドタンパク質のレベルが40~50%減少したことを見出した。他の周波数での刺激、20~80Hzの範囲では、この低下は起こらなかった。
 研究チームは、今度はもっと侵襲性の少ない技術が同じ効果を達成するかどうかの検討を始めた。研究チームは外部刺激、この場合は光を使って脳にガンマ刺激を送ることを考え付いた。考案したのはLEDsで構成された簡単なデバイスで、多様な周波数で点滅するようにプログラムできる。
 このデバイスを使って、40Hzで点滅する光に1時間当てるとガンマ振動が強化され、アルツハイマ病初期でマウスの視覚野のβアミロイドレベルが半分になることを見出した。しかし、そのタンパク質は24時間以内に元の戻った。
 研究チームは、もっとアミロイド堆積が進んでいるマウスで長時間の処置がアミロイドプラークを減らすかどうかを調べた。1日に1時間、7日間処置すると、プラークも浮遊性のアミロイドも著しく減少した。現在、この効果がいつまで続くかを調べている。
 さらに研究チームは、ガンマリズムがアルツハイマ病のもう1つの特徴、異常に変化し、脳内でもつれを形成するタウタンパク質も低下させることを見出した。
「この研究の成果は、以前から知られているガンマ振動が認知機能に関連しており、蓄積を一掃する脳の機能で重要な役割を担っていることを示している。それは素晴らしいことであり驚くべきことである。また、人への適用可能性の展望を開くものである」とハーバード医科大学神経学教授、Alvaro Pascual-Leoneはコメントしている。
 Tsaiの研究室は、光がガンマ振動を脳の視覚野まで送るかどうかを調べており、暫定データはこれが可能であることを示唆している。また、アミロイドプラークの減少が、アルツハイマのマウスモデルの行動兆候に何らかの影響を与えるかどうか、この技術が、正常に機能しないガンマ振動に関わる他の神経障害に影響を与えるかどうかも調べている。
 研究チームは、ガンマ振動が、どの程度効果を発揮するかを把握するための研究も行った。ガンマ刺激後、βアミロイド生成プロセスが活性が低下することも見出した。ガンマ振動は脳のβアミロイドタンパク質一掃能力を改善した。これは通常、膠細胞として知られる免疫細胞の仕事である。
 アルツハイマ患者では、膠細胞が非常に炎症を起こしており、他の脳細胞に障害を与える毒性の化学物質を分泌する。しかし、ガンマ振動がマウスで増強されたとき、その膠細胞は形態変化を起こし、βアミロイドタンパク質の一掃に一段と活発になった。
「重要な点は、脳内のガンマ振動強化は、アミロイド負荷を減らすために少なくとも2つのことを行えると言うこと。1つは、ニューロンからβアミロイド生成を減らすこと。さらに、膠細胞によるアミロイドの一掃を強化することである」とTsaiは説明している。
(詳細は、www.mit.edu)