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Science/Research 詳細

インフラの長寿命化を支える先進レーザー診断技術の開発

December, 6, 2016, 和光--理研の共同研究グループは、トンネルなどのインフラの保守保全作業を、自動化、効率化するために「レーザ高空間分解能計測」、「レーザ打音」、「レーザコンクリート切断」と呼ばれるレーザ技術を開発し、コンクリート供試体を計測対象として、三つの技術を合わせた屋外試験に初めて成功した。
 トンネルなどのインフラの保守保全作業は、技術者の目視確認、手作業(触診・打音・叩き落とし)で行われる。したがって保守保全作業には非常に時間がかかり、大きな危険が伴う。暮らしの安全を維持し、安定した流通を確保するためにも、効率的で安全な保守保全法の確立が求められている。
 共同研究グループは、レーザ技術を用いて老朽化したインフラの保守保全作業を自動化、効率化するための研究開発に取り組んだ。
 理研は、インフラ表面の微細な状態を見極めるために「遠隔的散乱光検出・干渉計測・分光計測」の3つの方法を融合し、高空間分解(幅0.15mmのひび割れ及び0.1mmの凹凸の検出が可能)での表層部3次元計測を実現した。また、レーザを用いた遠隔・非接触検査である「レーザ誘起振動波診断技術(レーザ打音)」は、西日本旅客鉄道株式会社、レーザ総研等が先行して研究開発している。レーザ総研と量研機構は、計測機構を改良することで高速化を行い、従来の速度を大きく上回る1秒間に50回の計測を可能にした。これは光音響波計測法を基礎とした、レーザをトンネル内壁に照射することでコンクリート内部の欠陥を探査する方法。さらに原子力機構は、レーザを用いてコンクリートの脆弱部を溶断(切断)し除去する技術「レーザコンクリート切断」の原理実証と高速・省力化のためのデータベースの構築を行っている。
 これらの三つの技術はそれぞれ、現在インフラの保守保全作業で行われている目視確認と手作業による触診、打音検査、叩き落としに相当する方法。将来、インフラ保守保全作業を遠隔かつ非接触で、高速に行うための基礎になると考えられる。実構造物を対象とした性能検証、使用性・実用性向上など、社会実装に向けた課題は多く残されているが、研究グループは、今後、道路管理者や民間事業者の協力を得ながらさまざまなタイプの欠陥の検出・処理の実地検証を重ね、社会実装に向けた課題を解決し、実用化につなげていく。
 研究グループは、理化学研究所(理研)光量子工学研究領域の緑川克美領域長、和田智之グループディレクター、加瀬究先任研究員と、レーザ技術総合研究所(レーザ総研)の島田義則主任研究員、倉橋慎理研究員と、量子科学技術研究開発機構(量研機構)の河内哲哉経営企画部次長、錦野将元上席研究員と、日本原子力研究開発機構(原子力機構)の大道博行特任参与、山田知典研究員らで構成。
(詳細は、www.riken.jp)