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光を使って難問を解く新しい量子計算原理を実現

October, 25, 2016, 東京--革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の山本喜久プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として、日本電信電話(NTT)NTT物性科学基礎研究所 量子光制御研究グループの武居弘樹 主幹研究員、稲垣卓弘 研究員らのグループと、情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)情報学プリンシプル研究系の宇都宮聖子 准教授、Peter McMahon 研究員らのグループは、現代コンピュータでは効率よく解くことが困難とされている組合せ最適化問題の解を高速に求める「量子ニューラルネットワーク」を実現した。
 インターネット、電力ネット、センサネットなど、社会を構成する様々なネットワークが大規模化・複雑化する現在、リソースの最適化が重要な課題となっている。これらの課題の多くは組合せ最適化問題と呼ばれる、現代コンピュータが苦手とする数学的問題に帰着することが知られている。量子ニューラルネットワークは、光パラメトリック発振器と呼ばれる新型レーザの発振振幅を用いてスピンを表した時、相互作用する多数のスピンが全体のエネルギーを最低とするようなスピン配列で発振する現象を利用して、組合せ最適化問題の解を探索するものである。今回、各光パラメトリック発振器の振幅を光ホモダイン検波器で測定し、得た情報を帰還する「量子測定フィードバック」を実装することで、全ての光パラメトリック発振器間の結合が可能な量子ニューラルネットワークを実現した。これにより、最大2,000ノード・200万結合の大規模組合せ最適化問題の解探索に成功し、現代コンピュータ上で動作する既存アルゴリズムを凌駕する性能を示した。今後、創薬、無線通信、圧縮センシング、深層学習といった実社会の様々な組合せ最適化問題への本成果の適用が期待される。

技術のポイント
(1)長距離光ファイバ共振器を用いた多数のOPOの一括発生
 実験系: フィードバック制御により位相を安定化した長さ1kmの光ファイバ共振器中に、周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)導波路を挿入。PPLN導波路に、波長768nm、繰り返し周波数1GHzのポンプパルス列を入力。PPLN導波路においては、ポンプ波長の2倍にあたる1536nmの波長において、ポンプ光の位相に対して0またはπの位相成分だけが増幅される位相感応増幅と呼ばれる現象が得られる。ポンプ光入力直後に位相感応増幅により発生した雑音が種光となり、光ファイバ共振器中の波長フィルタの透過波長を1536nmとすることで、位相が0またはπのみの光が発振するOPOを実現できる。光ファイバ共振器の一周時間が約5µs、ポンプパルスの時間間隔が1nsなので、この実験系を用いて時間的に多重された約5,000個のOPOを一括して発生することができる。
(2)量子測定フィードバックによるOPO間の結合
 OPOパルスの発生過程において、光ファイバ共振器中を周回するOPOパルス列のエネルギーを一部とりだし、各OPOパルスの位相、振幅を測定。測定結果はFPGAに入力。FPGAには、どのOPO間を結合するかという情報をあらかじめ入力しておく。FPGAは、これらの情報をもとに、次のステップで各OPOに入力するフィードバック信号を計算。このフィードバック信号を、OPOと同一の波長と位相をもつ光パルスに重畳し、該当するOPOに同期して注入することで、OPO間の結合を実現。これにより、全ての組合せのOPO間結合を実装することが可能となる。今回の実験では、最大2,048のOPOに対し本手法を実装することで、2百万通り以上のスピン間結合(無向グラフの場合)を実現した。
(詳細は、www.ntt.co.jp)