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グラフェンを使って電気を光に変換

June, 20, 2016, Cambridge--MITの研究チームは、グラフェンシートに音の衝撃波と同様のプロセスを発見した。グラフェンシートでは、電流は一定の条件下で、スローダウンした光の速度を上回り、一種の光「ブーン」、強い集中光線を生み出す。
 電気を可視光に変換するこの全く新しい方法は、研究チームによると、非常に制御性が高く、高速で高効率であり、多様な新しいアプリケーションにつながる。
 この新しい知見は、興味深い観察から始まった。光が炭素の二次元(2D)形態であるグラフェンシートに当たると、光は数100倍分の1に減速する。この急減速は、興味深い一致を示していることが確認された。グラフェンシートを伝搬するフォトンの減速は、同じ材料を伝搬する電子の速度に非常に近くなった。
「グラフェンは、表面プラズモンと言うモードで光をトラップする能力がある。プラズモンは表面上の電子の振動を示す一種の仮想粒子である。グラフェンを伝搬するこのプラズモンの速度は、自由空間の光よりも数100分の1遅い」と論文の主筆、Ido Kaminerは指摘している。
 光の減速と電子の高速移動の組み合わせは、「グラフェンの異常な性質の1つであり、反対の効果を生み出すためにグラフェンを使う可能性、つまり光をトラップするのではなく光を生み出す効果だ。理論研究では、これは光を生成する新たな方法につながる」とMarin Soljačić物理学教授は言う。
 同氏によると、この変換は、電子の速度がグラフェンの中で光の速度に近づくことができるから可能になる。つまり「光の障壁」を破ること。音の障壁を破ることで衝撃波が生まれるように、グラフェンの場合は、これにより2Dに捉えられた光の衝撃波となる。
 研究チームが利用した現象はチェレンコフ効果と言われており、80年前にソヴィエトの物理学者、Pavel Čerenkovが初めて報告した。通常は天文学的現象に関係しており、超高速宇宙粒子が宇宙を高速で通過する時にその発見法として利用される。また、粒子加速器の中で高エネルギー衝突から生まれる粒子の発見にも利用される。この効果は、物体が光の速度付近で移動するときに有効であるので、これまでは地上の技術に関係するとは考えられていなかった。しかし、グラフェンシートの中での光の減速は、この効果を実用形式で利用する機会を与えた、と研究チームは考えている。
 電気を光に変換する方法は非常に多様である。トマス・エジソンが1世紀以上前に完成した加熱タングステンフィラメントから蛍光灯、多くのディスプレイスクリーンを光らせ住宅照明としても用いられるLEDまである。しかしこの新しいプラズモンベースのアプローチは、一定のアプリケーションでは、究極的にはさらに効率的でコンパクト、高速で、可変性のある代替となる。
 恐らく最も重要な点は、これは現在のマイクロチップ技術に匹敵する規模で効率的で制御性が優れたプラズモン生成方法である。そのようなグラフェンベースのシステムは、新しい光ベースの回路の実現にとって潜在的に重要なオンチップコンポーネントとなる。光ベースの回路は、ますます小型化し、より効率的なデバイスの方向に進化するコンピューティング技術における新たな方向と考えられる。
 光ベースのチップを開発しようとする際に研究者が直面する1つの問題は、電気は容易にワイヤに閉じ込められるが、光は広がる傾向があることだ。しかし、グラフェン層の内部では、適切な条件下で、ビームの閉じ込めは極めて良好である。
 研究チームによると、グラフェンには素晴らしい点が多くある。グラフェンは他のエレクトロニクスと簡単に集積でき、オンチップ光源として利用できる可能性があるからだ。これまでは理論研究だったが、次のステップは、その概念を証明するシステムの機能板を作ることである、とSoljačićは話している。