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ペロブスカイト太陽電池、暗闇でリカバー

June, 10, 2016, Los Alamos--ロスアラモス国立研究所の研究チームは、ペロブスカイト太陽電池が太陽光の中で劣化する厄介な傾向の原因と、それへのソリューションの両方を見出した。この有望な技術を商用化するための1つの障害を取り除くことができるブレイクスルーである、と研究チームは説明している。
 研究成果によると、そのような劣化したデバイスは、暗闇の中でしばらくすると、自己回復力を示す。ペロブスカイトセルの光劣化は、電荷蓄積による純粋な電子的過程であり、結晶構造に化学的損傷はなく、したがって抑制できる。それとともに、セルの自己回復特性により、暗闇の中でセルは回復する。これらのことを研究チームは確認した。
 「われわれは、環境温度をコントロールすることでデバイスのパフォーマンスを安定化できる。デバイスの劣化は、温度を数℃下げる、すなわち25℃から0℃へ下げるだけで抑制できる」と主席研究者、Wanyi Nieは説明している。
 研究チームは、有機金属ハロゲン化物半導体ペロブスカイト太陽電池を研究している。これは、20%を超える高いパワー変換効率(PCE)と製造コスト低いことから、有望視されている。このペロブスカイト材料は、低温溶液プロセスで合成される。高PCEは重要であるが、概念実証実験から実際に市場で実現性があるPV技術への移行を成功させるには、デバイスは連続太陽光の下で、もちろん屋外条件の大気中、湿度中でも安定動作が求められる。
 外気/周囲湿度に対する安定性の問題は、カプセル化によって回避できるが、ペロブスカイトベースのデバイスの光安定性は未解決の問題として残っていた。論文によると、このような太陽電池は、真空下にあっても、連続的に太陽光を受けると劣化する。太陽光によって時間とともに劣化すると、ペロブスカイトベースの太陽電池の商用化は難しくなる。
 詳細なデバイスと分光学的評価を行うことによって、研究チームは、ペロブスカイトバンドギャプ深く、相対的に低いエネルギーで、太陽光が準安定トラップ状態を引き起こすことを確認した。これは、結果的に光生成荷電キャリアトラッピング、キャプチャになる。時間の経過とともに、トラップされたキャリアは、さらにデバイスに蓄積され、光電流が減少する。他方、太陽電池デバイスを数分暗闇に置くと、このようなトラップされた電荷は除去され、次の動作サイクルでは元のデバイスパフォーマンスに復帰する。研究チームによると、これらのプロセスは極めて温度依存的である。数10℃範囲の温度制御により、光劣化メカニズムの活性化を回避するか、あるいは自己回復プロセスをスピードアップできる。
 このようなトラップ状態の微視的起源を説明する可能な物理的メカニズムを研究して、結論として、ペロブスカイト格子に存在する、格子歪に関係する小さなポラロン的状態、分子再配向を作るというシナリオが最も可能性がある、と研究チームは説明している。