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ETH Zürich、銀原子で光をスイッチング

February, 9, 2016, Zürich--フォトニクスと通信のJürg Leuthold教授の研究チームは、世界最小の集積光スイッチを開発した。小さな電圧を印加すると、原子の位置が変わり、スイッチがON、OFFされる。
 世界中の通信ネットワークで交換されるデータ量は飛躍的に伸びている。有線およびモバイル通信のデータ量は現在、それぞれ毎年23%、57%で増加している。この成長がどこまで続くかは予測不可能。と言うことは、すべてのネットワークコンポーネントは不断に効率を高めなければならないことを意味する。
 このようなコンポーネントには、変調器が含まれる。変調器は、電気の情報を光信号に変換する。つまり変調器は、入力電気信号の周波数でレーザをON/OFFする高速電気スイッチである。変調器は、データセンタに何千も導入されているが、大きすぎるという欠点がある。幅が数センチメートルであれば、大量に使用すると非常に大きなスペースを占める。

マイクロ変調器からナノ変調器へ
 半年前、研究チームは変調器をもっと小さく、エネルギー効率を高めることができることの証明にすでに成功している。その研究の一部として、わずか10µm幅のマイクロ変調器を紹介した。これは商用の変調器よりも10000倍小さい。
 研究チームは、世界最小の光変調器を開発することで、次の段階に進んでいる。その変調器は、個々の原子レベルで動作する。フットプリントは、スイッチと光導波路を含めても、1000倍小さくなる。しかし、スイッチ自体はさらに小さく、原子スケールである。
 実際のところ、変調器は、システムで使用される光波長よりも大幅に小さい。通信では、光信号は1.55µm波長のレーザ光を用いて伝送される。通常、光デバイスは、それが処理する波長よりも小さくすることはできない。

新しい構造
 しかしシニアサイエンティスト、Alexandros Emborasは、変調器の構造を再構成することに成功して、物理学の法則が誤りであることを証明した。この構造により、たとえ研究者が「標準波長」の光を使っていても、個別原子が中を突き抜けることが可能になった。
 エンボラスの変調器は、2つの小さなパッドで構成されている。1つは銀、もう1つはプラチナ、これらがシリコン光導波路上に置かれている。2つのパッドは、数ナノメートル(nm)離れて相互に平行に配置されている。銀パッドの小さなふくらみがギャップに突き出しており、プラチナパッドに触れそうになっている。

銀原子による短絡
 その変調器の動作原理。光ファイバからの入力光は、光導波路によってギャップの入り口に導かれる。金属表面の上で、光は表面プラズモンに変わる。プラズモンは、金属表面の最外核原子層の電子に光がエネルギーを移動させるときに起こり、電子を入力光の周波数で振動させる。電子振動は、光そのものよりもはるかに小さな径である。これにより電子がギャップに入り、ボトルネックを通り抜けることができる。ギャップの反対側では、電子振動は変換されて光信号に戻る。
 電圧が銀パッドに印加されると、単一銀原子、せいぜ数個の銀原子が先端に移動し、そこにとどまる。これによって銀パッドとプラチナパッド間で短絡が生じ、それらの間に電流が流れる。これはプラズモンのループホール(輪)を閉じる。つまりスイッチが反転し、状態がONからOFFへ、あるいはその逆に変わる。電圧が再びある閾値以下に落ちるとすぐに、銀原子が逆行する。ギャップが開き、プラズモンが流れ、スイッチが再びONになる。このプロセスは何百万回も反復することができる。
 この研究に参加しているETHのMathieu Luisier教授は、LuganoのCSCSにあるハイパフォーマンスコンピュータ(HPC)を使ってシステムのシミュレーションを行った。これによって同教授は、銀先端の短絡が1個の原子によって生じることを確認した。

真のデジタル信号
 プラズモンは、ボトルネックを完全に通過するか、しないかしか選択できないので、これは真のデジタル信号、つまり1または0を生成する。「これによってわれわれは、トランジスタのようなデジタルスイッチを作ることができる。われわれは、長い間このようなソリューションを探していた」とLeuthold氏はまとめている。
 今のところ、その変調器は連続生産の準備がきていない。このレベルの桁で量子効果を使って動作する他のデバイスとは違い、その変調器は室温動作という利点はあるが、まだ非常に遅い段階にある。これまでのところ、それはMHzレンジかそれ以下のスイッチング周波数でしか動作しない。ETHの研究チームは、GHzからTHzレンジの周波数となるようにそれを微調整しようとしている。

リソグラフィプロセスの改善
 研究チームは、最初から部品を作製して再開発したリソグラフィ法をさらに改善しようとしている。目的は、このようなコンポーネントが将来的に高信頼に製造できるようにすることである。現在、製造は6回のうち1回でしか成功しない。しかし、これを成功であると考えている。原子スケールのリソグラフィプロセス は未知の領域だからである。
 この研究を続けてナノ変調器に進んでいくために、Leutholdはチームを強化した。