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ワシントン大学、レーザで液体を冷却

December, 7, 2015, Washington--ワシントン大学(UW)の研究チームは、実世界の条件でレーザで水や他の液体を冷却する方法を考案した。研究チームは、赤外レーザを使って水を華氏36度まで冷却した。
 この技術を使うと、例えばマイクロプロセッサはいずれ、レーザを使ってコンピュータチップの特定のコンポーネントを冷却し、より効率的な情報処理ができるようになる。
 UWのチームは、生物学的応用を念頭に赤外光を選択した。可視光は細胞に損傷を与えるからである。研究チームは、レーザを使って、遺伝学や分子研究に一般に用いられる食塩水、細胞培養媒体を冷却できることを実証した。
 このブレイクスルーを達成するために、UWチームは市販レーザに普通に用いられる物質を使ったが、レーザ現象を逆向きに利用した。水中につりさげた1個の微小結晶に赤外レーザ光を照射し、吸収された光の量よりもわずかに大きなエネルギーを持つ特殊な発光を励起した。
 より高いエネルギーの発光は、結晶とその周囲の水から熱を持ち去る。レーザ冷却プロセスは最初、1995年にロスアラモス国立研究所で、真空条件で実証されたが、液体中でこのプロセスが実証されるまで約20年かかった。
 UWチームは、ローコストの熱水プロセスを使って、レーザ冷却アプリケーション用に周知のレーザ結晶を高速、安価、スケーラブルな方法で製造できることを実証した。
 研究チームは、レーザトラップを使って、液体に囲まれた単一のナノ結晶をチャンバに「ホールド」する装置を設計し、レーザで照射した。液体が冷却されているかどうかを判断するために、その装置は、研究者が微細な変化を動きで観察できる方法として、粒子の「シャドウ」を投影する。
 周囲の液体が冷えるに従い、トラップされた粒子が減速し、研究チームは、明確な冷却効果を観察することができた。研究チームは、組み込み色温度計のように、冷却にともない青緑から赤緑に色変化する結晶も設計した。
 現在までのところ、UWチームは単一のナノ結晶で冷却効果を実証しただけである。レーザ冷却プロセスは非常にエネルギー集約的であるが、研究チームは、今後は効率向上の方法探求を考えている。