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量子コンピューティング、2028年に150億ドル

August, 1, 2018, Singapore--ABIリサーチ(ABI research)の予測によると、量子コンピューティングサービスが生み出す総収益は、2028年までに150億ドルを超える。
 量子コンピューティングサービス需要は、一部のプロセスハングリーR&Dや、先進的AIアルゴリズム、次世代サイバーセキュリティ暗号化、交通のルーティングとスケジューリング、タンパク質合成、先進的化学および物質の設計などを含む新たなアプリケーションが成長の原動力となる。これらのアプリケーションは,新しい処理パラダイムを必要としており、ムーアの法則(Moore’s law)に縛られた古典的コンピュータでは対処できない。とは言え、近い将来に量子コンピュータが古典的コンピュータに取って代わると期待すべきではない。
 シーケンシャル処理原理をベスにした、古典的コンピュータと違い、量子コンピュータは、量子物理学に端を発する2つの基本的特性、つまりエンタングルメントと重ね合わせを利用している。これにより、あるタスクの実行が非常に強力になる、特に並列処理を必要とする相互に関連する事象の場合である。
 「古典的コンピューティングは、ムーアの法則時代の後でも、なくなるわけではない」とABIリサーチの主席アナリスト、Lian Jye Su氏は言う。「これらの機械は、テクスト、ビデオ,スピーチ処理、信号処理などの従来のタスクの実行では究極の処理能力のままであるが、膨大な並列処理を必要とするアルゴリズムを実行する場合、量子コンピュータの挑戦を受ける可能性がある」。
 しかし、量子コンピューティングは、まだ開発初期にあり、短中期的に大規模な商用導入をする準備はできていない。スケーラビリティ、技術的安定性、信頼性、コスト効率は業界が対処すべき主要な問題である。その後に、量子コンピュータが研究室プロジェクトから外に出て行く、あるいは非常に限られた商用導入となる。安定した、誤り率の低い量子コンピュータを作ろうとする計画は、インフラストラクチャ、ソフトウエア開発、人的専門家への膨大な投資を必要とする。オペレーションは現在、極低温、高磁場、真空あるいは無菌環境で行われているため、その技術の拡張は極めて難しく、運用も高価になる。従って、量子コンピューティングが次の10年以内に流通段階に達することはありそうにない。量子コンピューティング技術は、クラウドドメインに集中的にとどまる見込である。
 D-Wave Systems, IBM, およびRigetti Computingは、商用量子コンピューティングシステムを持つ数少ないベンダである。断熱的量子計算をベースにしたD-Wave Systemsの量子コンピュータは、政府機関、航空宇宙、サイバーセキュリティベンダに販売されている。しかし、このタイプのシステムは、競合他社のものと比べて、計算能力の点で制約がある。IBMとRigetti ComputingおよびAlibaba, Google, Intel, やMicrosoftなどの他のクラウドコンピューティングジャイアントは、量子ゲートモデルをベースにした量子コンピューティングシステムを選択している。
 「業界は、多様な量子力学現象を利用することで多様なハードウエア実装法を探求しているが、全て厳しいトレードオフという現実に直面しており、長いコヒレンス時間の維持、誤り率の低減、コスト最小化、スケーラブルな製品の開発の間で適切なバランスを見いださなければならない」とSu氏は指摘している。
 従って、過剰なコストと極端に制約のある物理的実装は、量子コンピューティングを政府、公共、軍事機関、大企業、クラウドコンピューティングの巨人に限ることになる。量子コンピューティングは、一般人には、as-a-serviceビジネスモデルで利用可能になる。「クラウドコンピューティングの未来は、ますます並列処理に依存するようになる。新しいタイプの高度なアプリケーションやアルゴリズムが出てくるからである。こうしたアルゴリズムは、その実行にムーアの法則以上を必要とし、業界は古典的コンピュータに代わる量子コンピュータの開発を促進するさらなる努力を展開する必要がある」とSuは結論づけている。
(詳細は、www.abiresearch.com)