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GaN系微小光源(短共振器レーザ・microLED)、 独自基板と工法を開発

November, 7, 2022, 京都--京セラ株式会社は、独自の成膜技術を応用し、GaN系微小光源(短共振器レーザ・microLED)を作製するためのSi(シリコン)ベースの独自基板とその基板を用いたGaN系微小光源の新工法(デバイスプロセス)を開発し、世界で初めて100µm長レーザの発振を実現した。

・微小光源(短共振器レーザ/microLED)
素子の一辺が100µm以下の光源は微小光源と呼ばれ、その代表的なものが、短共振器レーザとmicroLED。これらの微小光源は、高精細、小型軽量という優位性から、次世代の車載用ディスプレイやスマートグラスへの活用、また通信、医療分野への応用も期待されている。特に、microLEDチップの市場規模は2022年の約26億円※から2026年までには約3,700億円と、約142倍の市場拡大が予想されている(TREND FORCE調査)。

・微小光源を作製するための課題
従来のGaN系光源デバイス(LED、レーザ)の作製には、サファイア基板やGaN基板が使用されている。GaN系光源デバイスは、その基板を1,000℃以上の高温に加熱し、原料となるガスを供給することで、光源となるデバイス層(GaN層)を成膜し、デバイス層を基板と一緒に分割することで作製する。
しかし、さらに微細な光源を作製する場合は次のような課題があった。

①デバイス層の剥離が困難
微小光源を作製するために、一般的には、基板上でデバイス層を一つ一つの光源に分割し、さらにデバイス層を基板から剥離することが必要。しかし、微小なデバイスを基板から剥離することは極めて困難。

②欠陥密度が高く品質にばらつきが出る
微小光源の作製は、サファイア基板やSi基板上に、デバイス層(GaN層)という原子構造の異なるデバイスを成膜するため、基板の影響を受けやすく、欠陥密度が高くなる。

③製造コストが高い
GaN基板や、サファイア基板を使った製法は製造コストに課題があり、一方、別の課題として、サファイアより安価なSi基板を使うと基板からデバイス層を剥離することが困難。

京セラ開発の新工法
京セラが開発に成功した基板は、特殊な技術を採用している。まず、低コストで、大口径化が可能なSi基板上にGaN層を育成。その上にGaN層が成長しない材料でマスキングをし、中央に開口部を形成する。その後、GaN層を成膜すると、マスキングしていない部分からGaNの成長核が開口部上に成長する。成長核であるGaN層は成長する初期段階で欠陥が多く発生するが、それを横方向に成膜することで、欠陥密度が低く高品質なGaN層の成膜が可能となり、この低欠陥領域にデバイスを作製する。

新工法の優位性
①デバイス層(GaN層)の剥離が容易
GaN層が成長しない材料でマスキングすることにより、基板とGaN層の結合を抑制し、剥離が容易になる。

②欠陥密度が低く高品質なデバイス層(GaN層)の作製が可能
従来より広範囲に低欠陥領域を成膜できるため、ばらつきのない高品質なデバイス層の作製が可能となる。

③安価な製造コストの実現
新工法では安価であるSi基板からデバイス層(GaN層)の剥離を実現するため、製造コストの削減に貢献する。
(詳細、https://www.kyocera.co.jp)