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DUV LEDにより エアロゾル中の新型コロナウイルスの高速不活性化

March, 22, 2022, 東京--東京大学医科学研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授と情報通信研究機構(NICT)の井上振一郎室長らの研究グループは、小型・高出力、発光波長265nm帯の深紫外発光ダイオード(DUV-LED)を用いることで液体中ならびにエアロゾル中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を迅速に不活性化できることを実証した。

SARS-CoV-2によって引き起こされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界規模での流行が続いている。COVID-19の感染経路の一つとして、エアロゾル感染の存在が明らかになってきているが、エアロゾル化したウイルスに対しては液体薬剤の使用が有効ではないため、感染対策上、大きな課題が残されていた。このような状況であるため、深紫外LED照射によるウイルスの不活性化に大きな期待が寄せられている。しかし、従来のDUV-LEDの光出力は数10mW程度と小さく、迅速に高い不活性化率を達成するには不十分。また、SARS-CoV-2エアロゾルに対する深紫外LEDの定量的な照射効果についても明らかにされていなかった。

研究グループは今回、ピーク発光波長265 nmで光出力500 mW(世界最高出力)のシングルチップ小型深紫外LED照射光源を開発し、液体(試験皿内のウイルス懸濁液)およびエアロゾル中のSARS-CoV-2に対する不活性化効果を定量的に評価した。その結果、高出力深紫外LEDは、液体中のSARS-CoV-2の感染力を極めて短い照射時間(0.4秒以下)で10万分の1未満に減少させることが可能であることを明らかにした。また、エアロゾル中のSARS-CoV-2に対する深紫外LEDの不活性化効果は、液体中に比べて約9倍効率的であることを示した。研究成果から、小型・高出力の265nm帯 深紫外LEDがSARS-CoV-2の拡散を抑制するための極めて有効かつ実用的なツールになり得ることが示された。

研究成果は、2022年3月17日に米国科学雑誌「mSphere」のオンライン速報版で公開された。
(詳細は、https://www.ims.u-tokyo.ac.jp)