Science/Research 詳細

LEDs向けナノマテリアルで極めて重要な発見

September, 13, 2021, Lemont--ナノ結晶安定化のブレイクスルーにより、ローコストでコンシューマエレクトロニクスデバイス、ディテクタおよび医療イメージング向けエネルギー効率のよい光源の導入が可能になる。

LEDsは、光産業の陰の英雄である。LEDsは効率がよく、ほとんど発熱せず、長寿命。今回、研究チームは、コンシューマエレクトロニクス、医療およびセキュリティのアプリケーションで、より効率的で長寿命のLEDsを実現する新材料に注目している。

米国DOEアルゴンヌ国立研究所、ロスアラモス国立研究所、SLAC国立加速機研究所の研究チームは、そのようなLEDsに向けて安定したペロブスカイトナノ結晶を準備したと報告している。また台湾Academia Sinicaもこの取り組みに寄与している。

ペロブスカイトは、光吸収と光放出の特性をもつ特別な結晶構造を共有する種類の材料であり、ソーラセルや様々な種類のディテクタを含め、エネルギー効率のよい広範なアプリケーションで有用である。 

ペロブスカイトナノ結晶は、新しいLED材料として最有力候補であるが、テストで不安定性が証明されている。研究チームは、有機金属構造体(MOF)という多孔質構造でナノ結晶を安定化した。地球に豊富にあり、室温で製造される材料に基づいたこれらLEDsは、いずれ低コストTVsやコンシューマエレクトロニクス、優れたガンマ線イメージングデバイス、医療アプリケーションで自己発電X線ディテクタ、セキュリティスキャニグや科学研究などを可能にする。

アルゴンヌナノスケール材料センタ(CNM)の研究者Xuedan Maは、「われわれは、MOF構造にペロブスカイト材料をエンカプセルすることでその安定性問題に取り組んだ。われわれの研究は、このアプローチにより、発光ナノ結晶の輝度と安定性を大幅に強化できることを示した」とコメントしている。

またロスアラモスの前J. R. Oppenheimer ポスドク、Hsinhan Tsaiは、「MOFにペロブスカイトナノ結晶を統合するという魅力的なコンセプトは、粉末形態で実証されたが、LEDの発光層としてそれの統合に成功したのはこれが初めてである」と話している。

ナノ結晶LEDsを作ろうとする以前の取り組みは、ナノ結晶が不要なバルク相に劣化し、そのナノ結晶の利点を失い、実用的なLEDsとしての潜在性を弱めることで阻止された。バルク材料は、数十億の原子で構成されている。ナノ相のペロブスカイトなどの材料は、わずか数個あるい数千原子のグループ化で作られ、したがって挙動が異なる。

新しいアプローチでは、研究チームは、MOFのマトリクス内で製造することでナノ結晶を安定化させた。金網フェンスに捉えられたテニスボールのようなものである。チームは、フレームワークに鉛ノードを金属前駆体として、原材料としてハロゲン化物塩を利用した。ハロゲン化物塩溶液は、メチルアンモニウム臭素を含んでおり、これはフレームワークで鉛と反応し、マトリクスにトラップされた鉛コアの周りにナノ結晶をアセンブリする。マトリクスがナノ結晶の分離を維持するので、ナノ結晶の相互作用や劣化はない。この方法は、溶液コーティングアプローチをベースにしているので、現在広範に利用されている無機LEDsを作るための真空処理よりもはするかに低コストである。

MOF安定化LEDsは、様々な色合いと共に明るい赤、青や緑を作ることができる。

「この研究では、MOF安定化ペロブスカイトナノ結晶が、広い色範囲で、明るい、安定したLEDsとなることを初めて実証した」とロスアラモス国立研究所の集積ナノ技術センタの研究者、Wanyi Nieはコメントしている。「われわれは様々な色を作ることができ、色純度を改善し、材料の発光能力の尺度、フォトルミネセンス量子収率を高めることができる」。

研究チームは、アルゴンヌのDOE科学ユーザ施設、Advanced Photon Source (APS)を利用して、時間でペロブスカイト材料の変化を見ることができる時間分解X線吸収分光を実行した。研究チームは、材料を透過する電荷を追跡することができ、光発光時に起こることについて重要な情報を得た。

「強力なシングルX線パルスとAPS固有の時間構造によりわれわれはこれを実施できただけである。荷電粒子が微小なペロブスカイト結晶内部のどこにあるかを追跡できる」とアルゴンヌX線科学部グループリーダー、Xiaoyi Zhangは話している。

耐久性テストでは、その材料はUV照射下、熱、および電界で十分な性能を示した。劣化、光検出および発光効率の損失はなかった。これはTVsや放射線検出器などの実用的なアプリケーションで重要な条件である。
(詳細は、https://www.anl.gov)