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MIL-STD 461 CS118「静電気放電」レビュー(その2)

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2.CS118 校正チェック
 MIL-STD-461Gの殆どの試験と同様、CS118は校正チェックまたは信号インテグリティ確認で始まる。図2は、異なる2つの確認で実施する校正チェックの一般的な構成を示している。ESD試験器の放電ピンの電圧を静電電圧計で確認する。ESD試験器は2 kVに設定し、放電ピンの先端は特定の静電電圧計に使用される規定距離に配置する。殆どの静電電圧計には、センサを正確な位置に配置するためのガイドあるいは光収束法を利用できる。電圧計は測定した電圧を表示する。放電ピンの電圧の許容範囲は10 %である。放電ピンの電圧は、それぞれ可能性のある試験電圧(4kV、8kV、15kV)で繰り返す。放電ピンの電圧が許容範囲内に収まらない場合は問題を修正し、再度、校正チェックを実施する。放電電流の波形は、校正チェックの2番目のパートである。図2は、対象となる回路の放電電流チェックの構成図である。ESD試験器は放電電流波形チェック用の接触放電モードで8 kVに充電されている。オシロスコープを設定して波形を捕捉し、ESD試験器の放電ピンの先端を対象となるプレートに接触するよう配置する。放電を起こし、捕捉した波形を見て規格への適合を確認する。波形は図3に示すが、詳細なパラメータは表1に記載した。対象となる設計は、IEC 61000-4-2 の試験方法に用いるものと同じであることに注意する。

3.CS118試験
 ESD試験の試験構成は、カスタマイズしない標準の構成を使う。これは、同様のIEC規格で要求されるカスタマイズされたESD構成とは違っているので、IEC試験に慣れている場合は、この違いに留意する。ESD試験器のグランドストラップをEUTの筐体のグランドポイントに接続する。導電面には8 kVでの接触放電のみが要求される。ESD試験器を試験電圧に設定し接触放電を準備する。EUT性能の感受性表示をモニタしながら、極性がプラスの電圧を5回、マイナスの電圧を5回の放電を加える。
 気中放電試験は接触放電が使えない試験ポイントに適用する。気中放電試験では試験電圧を2 kVに設定し、極性がプラスの電圧を5回、マイナスの電圧を5回の放電を気中放電試験ポイントに加える。放電は各試験ポイントで起こることもあるが、残留電荷が存在する場合もあることに注意する。放電させてから次の放電をする間に帯電した荷電を除去するためには、1 M Ωの抵抗器を通って接地する経路を定めている放電導体を使う。2 kVレベルで各ポイントを試験した後、高い試験レベル(4 kV、8 kV、15 kV)で試験を繰り返し、適合を決定する。気中放電は、ESD試験器の気中放電用の放電ピン先端を0.3 m/ 秒までの速度で放電または試験ポイントへの接触が起こるまで試験ポイントに移動させることで達成できる。試験中の放電ピン先端の向きは、試験ポイントから垂直を保持すること。試験ポイントには通常使用中にオペレータが接触する可能性が高い場所を含まなければならない。規格には「考慮すべき試験ポイントには、適用できる場合は以下の場所を含むこと:制御・キーボード部分の電導または非電導ポイント全ておよびスイッチ、取手、ボタン、LED表示灯、継目の隙間、格子、コネクタシェル、他の触りやすいエリアなど人体が接触する場所全て。最低限、全ての面を含むこと」とある。絶縁体として機能する空気は低い絶縁破壊電圧であることを思い出し、絶縁材料に試験ポイントとして必ず換気口が含まれるようにする。
 試験構成の初期には、ESD試験器のグランドストラップはEUT筐体に接続されなければならなかった。小型あるいはバッテリ駆動のユニットなど接地されていない筐体と機器のこのような接続については、何の記載もない。このような場合、静電気試験機のグランドストラップは試験場所のグランド基準プレーンに接続するとよい。また、放電間の残留電荷の除去は、蓄積された電荷による過剰試験を防ぐのに非常に重要であることも忘れてはならない。

4.まとめ
 ESD事象はよくあることで、低い電圧で起こる場合は気づかないことも多いが、それでも敏感な回路に不具合を起こすこともある。ESDから生じる事象を低減するには十分な管理プログラムが必要である。回路が露出していることが一般的である工場では、多くの管理手法を取り入れ継続的に抑制対策を検証する。電荷蓄積の防止には管理手法を製品や設備に組み込む。機器間の伝導性を保持することで電子が再結合し電荷を無効化する経路を作ることができる。ユニットに放電する手段を講じれば、人体モデルの電荷が対象物を損傷させないポイントへ消散することが可能となる。製品試験によって、自社の製品がESDに相応の耐性を備え、意図どおりに作動するという自信を持つことができる。MIL-STD-461Gにこの試験が追加されたことで、ESD評価に合理的な場所と、適合評価のための詳細な試験指示がわかるようになった。

著者紹介
 Steven G. Ferguson氏はCompliance Direction,LLCのチーフコンサルタントでiNARTE認定EMCエンジニア。試験およびデバイス評価分野で40年以上、試験方法の指導にも20年以上の経験がありEMC、製品安全、環境試験方法が専門。
 MIL-STD-461、MIL-STD-810、MILSTD-704/1275/1399、CE Markingについて豊富な知識を持ち、試験所運営や製造会社の設計担当、試験手順開発などの経験も生かして規制適合に幅広く対応している。EMI・EMC適合についてオンラインや顧客先で数多くのトレーニングを担当。対象は原子力施設、構造上のシールド、MIL-STD-461試験など幅広い。連絡先は下記のとおり。
http://www.compliancedirection.com
stevef@compliancedirection.com

(その3へ続く)
2018年10月12日 by Steve Ferguson