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MIL-STD 461 CS118「静電気放電」レビュー(その1)

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はじめに
 2015年12月に発行されたMIL-STD-461Gでは、人体モデルの静電気放電(ESD:Electrostatic Discharge)の試験が追加された。この版以前は、電子システムおよびサブシステムに対するこの種の試験は2010年発行のMIL-STD-464Cに従ってシステムレベルで運用されていた。461G、464Cともに類似した要求事項がある。461Gには試験の詳細が記述されたが、464Cでは適合検証の方法についての詳細記述がないまま適合要求を規定していた。
 2010年以前は、DoDによって試験方法を決めるのにESDのプログラムがいくつか使われるケースがあり、ESD事象へのトレランスを検証する試験方法も含む数例もあった。より一般的な規格が使用され、今なお使われている。

・MIL-STD-1686は、軍用装備ではない電子機器のHBM(Human Body Model)、MM(Machine Model)、CDM(Charged Device Mode)に関するESD管理プログラムを記述していた。さまざまなモデルが感受性に基づいてクラス分けされ、制御手段の実装についてガイダンスを提供するためにマークが付けられている。HBM評価のANSIとIEC規格が参照されているが、現行の1686Cでは前述したものより新しい版が使用されている。

・MIL-STD-331Dは軍用装備のESD管理に関する現行規格で、人体モデルのESDとは違うモデルが含まれ、その違いは軍用装備に要求される管理手段から来ている。この規格は軍用装備の試験および要求事項のJOTP062を参照している。

1.背景
 高校生の頃から、物理学の授業で原子核の周りを回る電子と、陽子の数の相対的な数に関連する正味荷電を持つ原子構造について教わってきた。非結合の電子を持つ物質は、少量のエネルギーを伴って電子を他の原子に放出する場合がある。2つの物質に接触することで電子が低減され、物質の分離によって2つの物質の間にある正味荷電を生成する他の原子中に電子がトラップされたままになることもある。
 存在する力次第だが、静電気は非常に高い電圧に達することがある。電圧レベルを分離している絶縁体の電子が再結合できるポイントに達した場合、スパークが起こって2種類の物質はニュートラルな状態に中和された帯電になる。例えば、静電気の帯電は次に示す多くの力によって生じる。

1. 2つの物体が接する箇所の摩擦によって、分離されていた電子が元の原子に戻らなくなって帯電する。これはよくあることで、例えばカーペットの上を歩くと1歩ごとに身体に電荷が追加される。その概要については図1を見ていただきたい。電荷は空気を通してあるいは対象物がトランジェント放電を伴う伝導経路を提供することによって消散する。空気中の水蒸気分子は空気を通してより簡単に電荷を消散させるので湿気の多い環境では電荷の蓄積は一般的に減ることに注意してほしい。

2. 対象物を帯電した物体またはその電界の近くに置いた場合、静電誘導は電子の再分配を生じる。開放回路を持つこの帯電した物体は、電流を流さずに電圧を供給する。

3. 粒子を衝突させると表面に電荷が発生する。電子は除去され、電荷の差異を生じる粒子の動きの方向へ動く。この帯電は、動いている物体または降水空電と称される風雨に関連していることが多い。

 ESD事象は、絶縁体が絶縁破壊電圧に達すると起こる。空気は、非伝導性材料と同様に絶縁体であることを覚えておくこと。絶縁破壊電圧は距離1 mil当たり、空気は約80 V/mil、殆どの絶縁体は200 V/milなので、この概値に基づくと100 mi(l 約2.5 mm)の空間または厚さ40 mi(l 約1.0 mm)の絶縁体は8 kVの電圧まで放電を防ぐことになる。絶縁体を通して放電がおこった場合は、絶縁体に小さな「ピンホール」を生じる損傷によって、絶縁体がエアギャップと同じになり、絶縁性能が著しく落ちることもある。

図1.ESDと帯電蓄積の概念

(その2へ続く)
2018年10月12日 by Steve Ferguson