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EMC規格【特集】「MIL-STD-461」レビュー by Steve Ferguson (4) MIL-STD 461レビュー:RS101 放射磁界感受性 & RS103 放射電界感受性(2/3)

2.RE101放射エミッション、磁界
MIL-STD-461Gの大部分の試験と同様、計測機器のインティグリティを確認するために校正チェックから始める。試験中に放射磁界をモニタする方法がある場合このステップを省略できるが、試験中に磁界モニタ用ループは存在しないし、EUTは磁界を歪ませて正確な測定を妨げると思われる。
図1は、電界測定に電界モニタ用ループが利用可能で、放射ループ中の電流の流れをモニタするのに電流プローブが設置されている場合の校正の構成を示している。この関係を校正プロセスが確認できるように、放射ループの巻線が1アンペアあたり9.5 × 107 pT をコイル内に生じることを思い出してほしい。いったん関係を確認できたなら、試験中に規定の磁界が得られるように電流をモニタする。
次に、校正チェックのプロセスに移る。放射ループは磁界モニタ用ループの取り付けをガイドし、校正位置に2つのループを配置する。規格によれば1 kHzで磁束密度110 dBpTが得られているかチェックが必要なので、真数に変換計算すると10ITJ70_Standard3_curc =316×103 pTとなる。316 ×103を9.5×107で割ると、磁界を発生させる電流値3.33 mAが得られる。コイルに流れる電流が1 Aあたり9.5 ×107 pTを発生するので、これをdBpTに変換すると159.55 dBpTとなる。真数の割り算がdB計算で引き算に変換できることを利用して、110 dBpTを得るために110-159.55=-49.55つまり-49.55 dBA が必要になる。これを真数に変換すると3.33 mAになり前の結果と一致することに注目してほしい。フィールド・センサと電流プローブの電圧を測りファクタを加算すると、その結果として電流と磁界の差が39.5 dBに帰着する。この関係を試験周波数範囲内全てで保っているので、すなわちdBpTで与えられる磁界は電流をdBmAで表した値に39.5 wを加算した値である。
いったん校正チェックが成功したとわかったならば、図2で示すようにEUTから5 cmのところに放射ループを置くため、磁界モニタ用のループを取り外す。各々の試験ポイントで試験周波数範囲(各々の周波数ステップの滞留時間は3秒)を走査する。試験ポイントはEUT各々の30 cm × 30 cmのセクションと各インターフェイス・コネクタである。機器ラック内の回路を持たない空パネルのような領域の試験ポイントを除くのは一般的な方法である。試験は最大183 dBpT(15アンペア)までの許容制限より10 dB上の試験レベルで完了する。
感受性が認められた場合は、感受性の閾値を測定することになる。EUTが感受性を示さなくなるまで、妨害波信号の振幅を減らしていくことにより閾値は決定される。そしてヒステリシスの影響を補正するために、さらに6dB下げる。次に感受性が確認されるまで信号の振幅を増加させる。単位dBpTで与えられる、適用されたこの振幅が閾値である。改訂G版が発行されるまでは、閾値測定の数値は規定されていなかった。現在の規格は、感受性および最悪のケースで測定の開始と終了の周波数を特定するよう述べている。感受性が確認された周波数範囲のオクターブにつき2~3の周波数など、感受性のプロフィールをマッピングする補助になるよう、より多くのポイントが使われるべきだと私は考えている。適用できる場合は、閾値測定が各々の異なる感受性表示に対してなされなければならないことに注意すべきである。
RS101の代替方法では、磁界を発生させるためにヘルムホルツ・コイルを使用する。ヘルムホルツ・コイルは、同じ方向に電流が流れるように全く同じ巻き方のコイルを近くに2個並べて構成されている。この電流の流れは、2つのコイル間に均一の磁界を発生させる。2つのコイル間の距離はコイルの半径と等しい。コイルの巻き方が正しくない場合は、2つのコイルからの磁界がキャンセルされる傾向があることに注意すべきである。
ヘルムホルツ・コイルの予備試験用校正は13.3 cmのループ(RE101のループ・アンテナ)を用いた規格とほぼ同様にコイルの中心で磁界を測定し、適用する電流を測定して磁界と電流の関係を確立する。全周波数範囲において、試験中に流す電流を決めるために、この関係は使われる。
EUTはコイルの中央に設置され、動作を確立する。EUTと周波数のステップサイズによって確立した標準滞留時間を使って周波数範囲を走査する。EUTは次の直交面の方向に向けられ、周波数走査が繰り返されて、次に最終的な直交面に向けられる。ヘルムホルツ試験法には、1回だけの周波数走査で面の完全な試験ができるという明確なアドバンテージがある。製品機種系列が同じような寸法の傾向がある場合、ヘルムホルツ・コイルの組立と使用は非常に役に立つ。規格には、ヘルムホルツ・コイルの寸法とEUTの最大寸法について、詳細事項が多く規定されていることに注意が必要である。

著者紹介
Steven G. Ferguson氏はCompliance Direction, LLCのチーフコンサルタントで、試験とデバイス評価の分野で40年以上の経験がある。試験方法の指導にも20年以上のキャリアがあり、EMC、製品安全、環境試験方法が専門。MILSTD-461、MIL-STD-810、MIL-STD 704/1275/1399、CE Marking について豊富な知識を持ち、試験所運営や製造会社の設計担当、試験手順の開発、試験実施の経験も生かして規制適合に幅広く対応している。EMC はじめEMI/EMC適合についてオンラインまたは顧客先での数多くのトレーニングコースを担当しており、対象は原子力施設、構造上のシールド、MIL-STD-461試験など幅広い。iNARTE認定EMCエンジニア。
連絡先は下記のとおり。
http://www.compliancedirection.com
stevef@compliancedirection.com

図1. RS101校正チェック用構成
図2. RS101の試験構成