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医療用フローティング回路のESD トラブルシューティング(1/3)

◆はじめに◆
医用機器は、患者に対してアースからきちんと分離した設計にしなければならない。なぜなら全ての医用製品はフローティング回路だからである。つまり回路(システム)グランドがアースグランドから分離されているということである。分離されたグランドを備えたフローティング回路のESD保護は非常に厄介である。場合によっては、従来のESD保護方法は上手く機能しないかもしれない。したがって、ESDがどのように生じ、どのように放電されるかを理解するのは重要である。ESD放電は、常に回路の特性に依存する。本稿では、最近のESDトラブルシューティング事例と、そこから学んだことを述べる。

◆背景◆
私は最近、4インチ(約10センチ余)の長いフレキシブルケーブルでシステムボードと接続されたサポート用周辺基板を備えた医療機器に取り組んだ。グランド接続、電源線、信号は1本のフレキシブルケーブルを通って周辺基板に到達している。周辺基板がサポートする周辺機器は3つ。各周辺機器はUART(UniversalAsynchronous Receiver-Transmitter:万能非同期送受信機)経由でクワッドUARTからUSBコンバータICによってシステムプロセッサと通信する。周辺機器の1つには、患者接続型圧力ホース用のカプラがあり金属が露出している。カプラにはホース挿入時に閉じるメカニカルスイッチがあるが、このスイッチはコネクタの金属部から絶縁されていない。スイッチは長さ3インチのワイヤで周辺基板につながっている。図1は、該当する周辺機器の詳細ブロック図である。

◆ESD試験の経過◆
金属コネクタは露出していて簡単に人体に触れるので、IEC61000-4-2のESD試験方法を適用する。IEC 60601-1-2:2014第4版によれば、医用機器はレベル4のESD放電(接触8 kV、気中15kV)に適合する必要がある。コネクタは15 kVの気中放電で試験した。スイッチは中にありコネクタは閉じた状態である。最初の放電では、3つの周辺機器は全てオフラインになり、どこかの段階で止まった状態となった。再起動にはハードの電源サイクルが必要であった。何度か放電した後、コネクタスイッチ検出用ICピンが損傷し、IC交換が必要な故障に至った。

図1.感受性の高いシステムの詳細ブロック図

2017年6月27日 by Aziz Yuldashev