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産総研、加工技術の複合化により高品位微細加工を超小型装置で実現

June, 5, 2018, つくば--産業技術総合研究所(産総研)製造技術研究部門表面機能デザイン研究グループ栗田恒雄主任研究員、三宅晃司研究グループ長は、従来は加工困難だった高アスペクト比(大きな縦横比)の、小径の穴や狭い溝などを金属に加工できる超小型のDEEL複合加工機を開発した。
 この加工機は、レーザ加工と電解加工の異なる原理の加工方法を同一機上で複合することで、金属に対して小径の穴や、狭い溝など高アスペクト比の形状を、デブリをほとんど発生させないで加工でき、斜めの穴や溝の加工もできる。また、複合加工の特徴である低エネルギー消費化とともに、幅430、高さ400、奥行き300mm、重量16kgの超小型軽量化を実現した。この加工機は一人で搬送できる大きさであり設置場所を選ばない加工が可能である。今回開発したDEEL複合加工機により、小径多孔インジェクションノズルや超小径ステントなど世界に類を見ない金属製品製造への貢献が期待される。
 前に開発したレーザ電解複合加工機は極細管の所望の位置へ正確にレーザを照射できるが、レーザ加工で発生するデブリが産業応用への障害となった。そこで、デブリの発生しない新たな加工技術の開発を行った。DEEL(Deep Electrochemical Etching with Laser assistance)複合加工技術は、レーザ加工と電気化学的なエッチング加工である電解加工の複合加工技術。主に電解加工で材料を除去するためHAZが少なく、絶縁被膜の底面だけをレーザで除去し、底面周辺の材料だけを電解加工で除去するため、高アスペクト比で微細な形状を、金属に加工できる。
 現在、内燃機用のインジェクションノズルでは直径数百μm、十数の穴加工が、冠動脈ステントは直径数mmの管に対する溝加工が用いられているが、DEEL複合加工機を用いれば、例えば直径100μm以下、数百の穴を持つ小径多孔インジェクションノズルや、脳血管など抹消血管を対象とした直径200μm以下の超小径ステントなど世界に類を見ない金属製品製造への貢献が期待される。
(詳細は、www.aist.go.jp)