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ダイヤモンド光回折格子を分光計、高出力レーザ制御に使用

September, 8, 2017, Lausanne--EPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)が開発した新技術により、光回折格子がピュアダイヤモンドから作製できるようになっており、表面は最後の原子まで滑らかになる。新しいデバイスは、高出力レーザの波長を変えるために、あるいは最先端のスペクトルグラフで使用できる。
 EPFLの研究チームは、ダイヤモンドを特定形状に微視的に切断し、原子レベルで滑らかにする特殊な方法を開発した。この新しい技術により、回折格子をピュアダイヤモンドから作製することができる。この回折格子は、分光計と、高出力レーザの光学コンポーネントの両方に理想的である。
 回折格子(グレーティング)は、プリズムのように、光をスペクトル成分に分ける平行な溝でできている。このようなグレーティングは通常、ガラスやシリコンから作られており、すでにスペクトログラフで、またレーザの波長変換にも使用されている。
 研究チームは、単結晶ダイヤモンドからこのグレーティングを作る方法を開発し、多くの新しい可能性に領域を広げた。ダイヤモンドは、熱伝導性では並ぶものがなく、この目的で使われるどんな他の材料と比較しても5~10倍優れている。また、ダイヤモンドは非常に硬く、赤外や可視光だけでなくUV光とも相性がよい。「ダイヤモンドは化学的に不活性であり、最もアグレッシブな化学物質でさえダイヤモンドを攻撃できない。しかし、これはダイヤモンドの加工が極めて難しいと言うことである。したがってダイヤモンドを彫るこの新しい方法が極めて有用であることが分かるのである」とDr. Niels Quackは説明している。

酸素を使ってダイヤモンドをカット
 研究チームが開発した技術は、画期的である。明確に定義された形状をミリメートルサイズの単結晶ダイヤモンドプレートにエッチングできるからである。わずか数ミクロンで分離された溝、信じられないような滑らかな表面が実現される。その技術を開発するために研究チームは、化学気相法(CVD)によって合成されたダイヤモンドを使用した。
 ダイヤモンドは、いくつかの段階でエッチングされる。まず、ハードマスクをダイヤモンドプレート表面に蒸着、構造化し、次に酸素プラズマに晒す。プラズマの酸素イオンが、電界によってダイヤモンド表面に加速される。ハードマスクで覆われていないところは、酸素イオンがダイヤモンド表面から炭素原子を1つずつはぎ取る。「電界の強度を調整することで、ダイヤモンドにエッチングする形状を変えることができる」とDr. Quackは説明している。「回折格子には、三角の溝を彫る。これらは相互にわずか数ミクロン離れている。選択的に一連の明確に定義された結晶面を露わにするためにプロセスパラメータを調整し、ほぼ原子レベルまで滑らかになるV溝を作ることができる。ダイヤモンドを単にレーザでカットするだけでは、この種の精度は得られない」。
 新技術は、特許申請されている。同じ原理はすでにシリコンで利用されているが、これまでにダイヤモンドで実証されたことはない。