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ネットワーク理論に基づいた新しい統合失調症の解析手法を開発

July, 29, 2015, 大阪--NICT脳情報通信融合研究センター(CiNet)の下川哲也主任研究員と大阪大学大学院連合小児発達学研究科の橋本亮太准教授のグループは、安静時の脳活動の脳画像データに対して脳内を活動の類似性で色分け(モジュール化)することにより、統合失調症患者群と健常者群それぞれに特徴的な脳部位モジュールを推定する安定的な手法を開発した。
統合失調症のデータに基づく客観的な診断法は未だなく、患者の主観的な症状の申告により医者が診断しているのが現状。今回開発した手法は、脳のデータに基づく客観的な診断法につながるもので、精神医学領域において注目される成果。今後、医療の現場で使えるような、医者の診断を補完する自動診断システムの開発に発展することが期待される。
近年、脳研究の発達、脳計測技術の高精度化に伴い、精神疾患の診断に、高い空間分解能で脳活動を計測したfMRI(機能的磁気共鳴画像)データの利用が検討されてきた。
統合失調症は約100人に1人が発症する精神障害で、診断は医者が症状を診ることによってなされており、客観的な検査等による診断法は未だ確立していない。脳活動のfMRIデータの分析においては、従来は、「脳のどの部位が記憶にかかわるか」といった、主に、特定の部位を推定することに重きを置いていた。しかし、研究が進むにつれて、実際には、複数の脳部位の相互作用で、機能の発現や病気の発症に至っている可能性が見えてきた。
部分ではなく、全体の相互作用を表現する学問に「ネットワーク理論」が挙げられる。今回、統合失調症のデータを解析するに当たり、最も有効なネットワーク理論として「モジュール」に着目した。
これまでの脳研究におけるモジュール解析は、個人の脳の解析には適用例があるものの、数十人の被験者を扱う集団解析の例はほとんどなかった。その最大の理由は、個人のモジュール構造のばらつきが大きすぎて、集団を特徴付けるモジュール構造を推定できないことにある。健常者群と患者群を判別するためには、同一群のばらつきが少なく、両群を比較すると大きな差が出るような、適当な指標を選ぶ必要があるが、集団のモジュール構造については、まだできていないのが現状。
今回、研究グループは、統合失調症患者の安静時脳活動のfMRIデータに対して、被験者間の差を考慮しつつ、従前の各個人でモジュール分け(色分け)する方法ではなく、新しい試みとして、平均化せずに、全員を一度に色分けすることにより、モジュール解析する手法を開発した。
この手法を使うことにより、結果のばらつきが少なくなり、安定的に、統合失調症患者群と健常者群それぞれに特徴的な脳部位モジュールを推定することが可能となった。これは、患者の主観的意見に左右されない、脳画像のデータに基づく客観的な診断法につながり、精神医学領域において注目される成果。
さらに、今回開発した手法により、今後、医療の現場で実際に使えるような、医者の診断を補完する自動診断システムの開発に発展することが期待される。