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生体試料の高分解能・高信頼度イメージング法を開発

February, 3, 2015, 東京--理化学研究所(理研)放射光科学総合研究センター米倉生体機構研究室の高山裕貴基礎科学特別研究員、米倉功治准主任研究員らと、慶應義塾大学の中迫雅由教授、苙口友隆助教の共同研究グループは、コヒーレントX線回折イメージング(CXDI)法による細胞など生体試料のイメージングの分解能と信頼性を大幅に向上できる測定・解析法を開発し、計算機実験により実証した。
 CXDI法は、µmからサブµmサイズの結晶化が極めて困難な試料の内部構造を、電子顕微鏡のように試料を薄片にスライスすることなく、光学顕微鏡より高い分解能で観察可能なイメージング手法。現在、細胞など生体試料の構造解析への応用が進められ、非常に強力なコヒーレントX線光源であるX線自由電子レーザー(XFEL)の利用により、分解能30~60 nmでのイメージングが可能となっている。
 しかし、X線回折能の低い生体試料からは弱いシグナルしか得ることができず、分解能をさらに向上させることができなかった。また、観測される回折パターンは実験上の制約から回折角が小さな領域のデータは測定できないため、結像に用いる従来の計算アルゴリズムでは、正しい像を再生できない場合があることが問題となっていた。
 共同研究グループは、これらの問題を同時に解決するために、生体試料と同時にX線回折能の高い多数の金粒子をイメージングするという新たな測定・解析法を考案。両者から回折されたX線が干渉することで、生体試料の回折シグナルは測定できるレベルに押し上げられる。また、金粒子の比較的高いシグナルの回折パターンから得られた金粒子の配置の情報を結像アルゴリズムに与えることで、より信頼度の高い試料像を再生する。理研のXFEL施設「SACLA」での実験に基づいた計算機実験の結果、この手法によって分解能が従来よりも2倍以上向上し、試料周縁部の低コントラスト構造も明瞭に観察できることが示された。この手法が実用化されれば、細胞や機能性材料がより精緻に可視化され、機能原理の解明に貢献すると期待できる。