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仮想現実ゲーム、ADHDを客観的に発見

January, 12, 2023, Helsinki--仮想現実ゲームは、多動症候群(ADHD)の客観的評価を提供し、治療アプローチ改善につながる可能性がある。

研究チームは、仮想現実(VR)ゲーム、視線追跡、マシンラーニングを使い、眼の動きの差がADHD(注意欠陥・多動性障害)検出に利用できることを示した。注意欠陥のより正確な診断のためのツールとなる可能性がある。同アプローチは、ADHD治療の基盤としても利用可能である。一定の改良により、自閉症など、他の症状の評価にも利用できる。

ADHDは、世界の子どもの約6%に影響を及ぼしている一般的な注意障害。数十年にわたる客観的なマーカー探求にも関わらず、ADHD診断は、まだ質問表、インタビュー、主観的観察に基づいている。結果は、曖昧になり、標準的な挙動テストは、子どもが日常的な状況をどのように管理するかを明らかにしていない。最近、アールト大学(Aalto University), ヘルシンキ大学(University of Helsinki), オーボアカデミー大学(Åbo Akademi University)の研究者で構成されるチームが、仮想現実ゲーム、EPELIを開発した。これは、日常生活から状況をシミュレートすることで子どものADHD症状を評価するために使える。

現在、チームは、VRゲームで子どもの目の動きを追跡し、マシンラーニングを使ってADHDの子どもにおける差を調べている。新しい研究は、ADHDと診断された37名の子どもと36名の比較群(コントロールグループ)が関わった。子どもたちは、EPELIと第2のゲームShoot the Targetをプレイした。Shoot the Targetでは、プレイヤは、環境で物体を見つけ、それらを見ることで“shoot”するようにるように指示される。

「われわれは、子どもたちがVRゲームで様々なタスクを実行する際、子どもたちの自然な眼の動きを追跡した。また、これはADHD症状を検出する効果的な方法であることを証明した。ADHDの子どもの視線は、環境における様々なモノに留まる時間が長く、その視線は一つの点から別の点へより速く、頻繁にジャンプする。これは、他の子どもと比べて、視覚系の発達の遅れと情報処理が苦手であることを示している」と、アールト大学の博士課程研究者、Liya Merzonは、指摘している。

気晴らしに歯磨き
プロジェクトリーダー、Juha Salmitaival、アールト大学アカデミー研究フェローは、そのゲームの力の一部は、動機づけ価値にあると説明している。「これは単にADHD症状を客観的に評価する新技術ではない。子どもたちは、標準的な神経心理学テストよりもそのゲームが面白いと思っている」。

Salmitaivalは、Åbo Akademi UniversityのMatti Laine、ヘルシンキ大学博士課程研究者、ヘルシンキ大学病院(HUH)の臨床神経心理学者、Erik SeesjärviとともにEPELIを考案した。ゲームは、HUH小児精神医学、小児神経学で働く神経心理学者が利用できる。

「臨床ワークの補助として利用に関心があるものがEPELIを使うことができる。経験は、非常にポジティブであった。最初のパイロット後、フィードバック調査に応えた神経心理学者の全てが、仕事における補完的ツールとしてVR法を利用することから恩恵を受けたと答えた」(Seesjärvi)。

EPELIゲーム開発は、Topi Siroが主導した。同氏は、アールトの卒業生で、現在はPeili Vision Oyで働いている。「そのゲームは、日常生活をシミュレートする一連のタスクを提供する、歯を磨く、バナナを食べるなどプレイヤは、TVがついていることなど、環境における注意散漫にも関わらずタスクを思い出さなくてはならない。ゲームは、全てを計測する。子どもがコントロールをどの程度クリックするか、タスクをいかに効率的に行うか。効率は、日常の機能に関連している。そこでは、ADHDの子どもは、問題を抱えていることがよくある」(Siro)。

リハビリの動機づけ
研究者は、VRゲームに、より広範な治療アプリケーションがあると見ている。症状の評価を超えて、ゲーミングはADHDリハビリの補助としても利用できる。「われわれは、ゲーミフィケーションベースのデジタル両方を開発したい。これは、ADHDの子どもが、さもなければしないようなことに夢中になるように支援できる。Salmitaivalによると、米国では、ADHDリハビリのための認定ゲームがすてに存在する。チームは、Oulu大学研究者とともにプロジェクトでリハビリの可能性を研究している。

研究にも関わっているアールト大学シニア講師、Linda Henrikssonは、そのようなアプリケーションに対するVRの並外れた可能性を指摘している。「VRは、興味深いツールである。刺激世界で起こっていることを正確に制御し、同時に、自然な状況での行動についての情報を収集するからである」とコメントしている。同氏は、脳が視覚情報をどのように処理するかについての専門家である。

研究者は、EPELIで、日常の問題で広範な困難の評価における他の潜在的なアプリケーションをすでに特定している。例えば、自閉症の人々で計画や柔軟性における問題を計測するために使える。変更により、このアプローチは、言語の問題、脳損傷、成人ADHD、脳性麻痺に関連した症状、加齢による記憶後退の評価にも使える。「ジュネーブのわれわれのパートナーは、加齢に関連する疾患を研究している。

研究は、MAGICSインフラストラクチャ、仮想技術に特化したアールト主導プロジェクトを使用した。
(詳細は、https://www.aalto.fi)