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液体のリアルタイム化学分析に微小lab-on-a-chip

November, 8, 2022, Wien--指先サイズのチップが、大きな実験室装置に取って代わる。TU Wienで液体の内容を1秒足らずで分析する赤外センサが開発された。

分析化学では、液体中のある物質の濃度変化を数秒のタイムスケールで正確にモニタすることが必要になる場合がある。特に製薬産業では、そのような計測は、非常に高感度、高信頼でなければならない。

ウィーン工科大学(TU Wien)で開発された新しいタイプのセンサは、このタスクに最適であり、独自の方法で複数の重要な利点を統合している。カスタマイズされた赤外技術をベースにして、それは以前の標準デバイスよりも遙かに高感度である。さらに、それは幅広い分子濃度に使用でき、液体中で直接動作可能である。これは、その化学的堅牢さの結果であり、したがって1秒足らずで、データをリアルタイム供給する。これらの結果は、”Nature Communications”に発表された。

様々な分子が異なる波長を吸収
「分子濃度を計測するために、中赤外スペクトル範囲の放射を利用する」と、TU Wien 固体エレクトロニクス研究所、研究プロジェクト長、Borislav Hinkov は言う。これは、よく知られた技術である。分子は、中赤外域の特定の波長を吸収するが、他の波長は減衰時間になしに送出される。したがって、様々な分子は、非常に特殊な「フィンガープリント」を持っている。波長依存吸収強度プロファイルを正確に計測することで、サンプルの特定分子の濃度をいつでも判定できる。

赤外分光学は、かなり前からガスセンシングに日常的に使用されてきた。TU Wienのチームの新しい成果は、この技術を指先サイズのチップへの実装である。これは、液体センシングに特に適している。そのようなセンサの開発は、技術的、分析的挑戦であった。液体は、赤外放射をガスよりも強く吸収するからである。コンパクトな液体センサは、固体エレクトロニクス研究所、Benedikt Schwarzとの協働で実現され、TU Wienの最先端のクリーンルーム、Centre for Micro- and Nanostructuresで製造された。

Borislav Hinkov は、「計測には数マイクロリットルの液体か必要なだけである。するとセンサがリアルタイムで、1秒に何度もデータを提供する。したがってわれわれは、リアルタイムで濃度変化を正確にモニタできる。また、ビーカー内の化学反応の現段階も計測できる。これは、他のレファランス技術と大違いである。そのような技術では、サンプルを採り、それを分析し、結果までに数分待つ必要がある」と説明している。

異分野間の協働がカギ
これは、TU Wienの電気工学と化学学部の協働により可能になった。固体エレクトロニクス研究所(Institute of Solid State Electronics)は、いわゆる量子カスケードレーザ(QCL)とディテクタの設計および製造で豊富な経験を持っている。それらは、微小な半導体ベースのデバイスであり、そのマイクロ構造およびナノ構造に基づいて精密に定義された波長で赤外レーサ光を放出または検出する。

そのようなレーザによる赤外放射は、マイクロメートルの長さスケールで液体に浸透し、同じチップ上のディテクタで計測される。これら特別に組み合わされた超コンパクトなレーザとディテクタを使って、センシングデバイスが実現されている。そのパフォーマンスは、最初の概念実証計測でテストされた。成果は、化学技術と分析研究所のBernhard Lendlグループとの協働で行われた。

実験的実証、タンパク質がその構造を変える
新しい中赤外センサの性能を実証するために生化学反応が選ばれた。既知のモデルタンパク質が加熱され、それによりその幾何学的構造を変える。最初、タンパク質は、螺旋状コイルの形だが、高温になるとそれは平坦な構造に展開する。この幾何学的変化は、タンパク質の特殊な中赤外フィンガープリント吸収スペクトルも変える。「われわれは、二つの適正な波長を選択し、適切な量子カスケードベースのセンサを作製した。これらを単一チップに組み込んだ。さらに、選択したモデルタンパク質の、いわゆる変性を高感度、リアルタイムで観察するためにこのセンサを利用することができる」(Borislav Hinkov)。

その技術は極めて柔軟である。様々な分子を調べるために必要に応じて必要な波長を調整できる。異なる波長を計測し、様々な分子の濃度を同時に区別するためにさらに量子カスケードセンサを追加することも可能。「これは分析化学に新たな分野を開く。液体のリアルタイム中赤外分光学である」(Borislav Hinkov)。可能なアプリケーションは極めて多様である。タンパク質の熱誘導構造変化の観察、他の分子の類似の構造変化から、化学反応のリアルタイム分析まで。例えば、薬剤製造、産業製造プロセス。液体の化学反応のダイナミクスをモニタする必要があるところならどこでも、この新しい記述が重要な利点となる。
(詳細は、https://www.tuwien.at/)