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変性眼疾患の早期診断に新デバイス

November, 7, 2022, Lausanne--EPFLの研究チームは、眼科用デバイスを開発した。これは、最初の兆候が始まるよりもずっと前に、一部の変性眼疾患診断に使用できる。初期の臨床試験では、プロトタイプは、わずか5秒で十分な精度の画像を生成した。

失明に至る変性眼疾患の進行を止め、制限するための治療研究が先へ進んでいる。しかし現在、最初の兆候が現れる前にこれらの症状を高信頼に診断できるデバイスがない。これらの疾患は、AMDがよく知られており、眼の光受容体の変化に関係している。また、その全てが根本原因は同じである。つまり,光受容体の背後にある細胞層,網膜色素上皮(RPE)の悪化である.EPFLの応用フォトニクス機器研究所:Laboratory of Applied Photonics Devices (LAPD)で開発されたデバイスは,兆候が始まる前にRPEの変化を観察し,細胞が分化する最初の生体内画像を提供する。この早期検出機能を装備した臨床医は,不可逆的な兆候が起こる前に、これらの変性を診断できる.最初の臨床試験の結果は,Ophthalmology Scienceに発表された。

光受容体背後の変化を観察
「RPE細胞に起こっている形態学的変化の観察機能は、退行性網膜障害の早期検出、新たな治療の効果のモニタリングにとって極めて重要である」(Laura Kowalczuk, a scientist at EPFL and at Jules-Gonin Eye Hospital)

AMDの原因だけでなく、RPEの悪化は、他の多くの眼疾患の背後にある。これに含まれるのは、網膜色素変性症や糖尿病性網膜症。光受容体とコロイド(血液を網膜に運ぶ血管を含む薄い組織層)の間にあり、RPEは視覚機能維持と眼の桿体錐体の健康維持に重要な役割を担っている。複数の研究グループが、顕微鏡で(生体外)これらの細胞を調べてその特性を判断し、加齢と共に起こる、またAMDや網膜色素変性症などの網膜疾患の始まり、および進行性形態的変化を観察した。しかし、これまでのところ、これらの症状を早期に検出し、進行をモニタリングするために、生きた患者で(生体内)でRPEを観察する簡便で信頼できる方法は存在しない。

臨床医がRPEを検査できるようにする機器の設計で様々な試みがなされた。しかし、これまでのところ、不十分な分解能、患者の安全性懸念、あるい過度に長い露光時間により、失敗だった。EPFLのチームは、2つの斜め光線を特徴とする網膜カメラを開発した。これは白眼でトレーニングされ、鮮明な画像を生成するために光波長における歪を補正する適応光学系と結合している。この技術は、Transscleral Optical Imagingと言い、赤外光ビーム利用の既存網膜イメージングシステムと同じである。しかし、工学部LAPD長、Christophe Moserによると、それは一つ重要な違いがある。「ビームは白眼を通して斜めに集束する。これは、瞳を通して網膜を照射したとき、眼の中心にある高反射性錐体光受容体細胞によって起こる過度の光の問題を回避する」。次に、瞳を介して眼から出る光波は、カメラでキャプチャされる。研究チームは、スクリーンに初の鮮明な画像を見た、ユリーカの瞬間であった。臨床適合のイメージングカメラで人体のこの部分を観察したものは、他に誰もいなかったからである。

29名の参加者で初の臨床試験
研究チームは、EPFLラボスピンアウト、EarlySightと提携して臨床プロトタイプを開発した。潜在的な診断用途にとって重要な優位性、露光時間5秒以下で、そのカメラは100枚の生の画像を撮ることができる。次にアルゴリズムが生画像を整列、統合して高品質の単一画像をスクリーンに表示する。インタフェースの特徴は5ボタンで、各々が眼の所定のエリアに対応しており、所望の画像が選択可能である。ユーザは、眼の背後のダイアグラムのどこでもクリックスと、イメージングしたい正確なエリアを選択できる。

プロトタイプデバイス、Cellularisは、欧州委員会(EU)のEIT Health ASSESSプロジェクトの一環として、パリのFrench National Health and Medical Research Institute (INSERM)でFrancine Behar-Cohenの研究チームおよびローザンヌのJules-Gonin Eye Hospitalと協力して開発された。続いてカメラは、Medical Retina Unit of Jules-Gonin Eye Hospitalの内科医連盟、Irmela Mantelで評価され、29名の健康なボランティアで、そのデバイスの鮮明なRPE画像生成能力を評価するために設計された。それぞれのケースで、カメラが生成した画像は、参加者のRPE細胞の形態学的特徴を定量化するに足る正確さだった。画像は、将来の医療研究に寄与するためにデータベースに蓄積された。「これらの細胞の形態学は、網膜機能で重要な役割を担っており、その健全性の強力な指標である」とEPFL、Jules-Gonin Eye Hospital、論文の主筆、Laura Kowalczukは、コメントしている。「RPE細胞を正確に検出し、それらに生ずる形態学的変化を観察する能力は、変性網膜疾患、新しい処置の効果のモニタリングにとって極めて重要である」と同氏は続けている。

(詳細は、https://actu.epfl.ch)