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京都大学、マイクロ流体デバイスの製造に革新をもたらす新手法

May, 25, 2022, 京都--京都大学の研究者による説明では、マイクロ流体は、極めて微量の液体を操作することができる薄くて柔軟なデバイスを実現する。現在、研究施設全体で行う必要がある多くの検査を小型化できるテクノロジーとして、オーダメイド医療などの分野で大きな可能性を持っている。
 京都大学アイセムス(高等研究院 物質-細胞統合システム拠点)の研究グループは、マイクロ流体デバイスの製造に前例のない新たな方向から取り組み、世界最小のマイクロ流路を作成する革新的なプロセスの開発に成功した。Easan Sivaniah(イーサン・シバニア)教授率いるアイセムスの研究チーム、PureosityのDetao Qin特定研究員が開発したこの新しいプロセスは、2022年5月19日(英国時間)に、 Nature Communicationsに発表された。

 これまで、マイクロ流路を使ったデバイスを作るには、いくつもの部品から組み立てる必要があり、流路に欠陥が発生する可能性があった。Pureosityチームが開発したプロセスは組み立てを必要としない。その代わり、光増感された一般的なポリマーとLED光源を用いて、水を運び、小さな生体分子同士を分離できる多孔質で高解像度なマイクロ流路を直接作製することができる。シバニア 教授は、「この新しいプロセスには大きな可能性があると考えている。オーダメイド医療検診だけでなく、小型化したセンサや検出器など、マイクロ流体技術の全く新しいプラットフォームになると考えている」と述べている。
 マイクロ流体デバイスは、DNAやタンパク質の分析にすでに使用されており、より幅広い用途が期待されている。将来的には、小さなパッチを着用するだけで医師が患者の健康状態をモニタリングでき、危険な症状には即時対応を可能にするようなデバイスができるのではないかとも言われている。
 今回の論文の共著者、伊藤真陽特定助教は、「今回の開発は最初の第一歩だが、インスリンやSARS-COV2殻タンパク質など、関連する生体分子が私たちの開発したマイクロ流路に適合したことは有望。この技術の展開として診断装置への応用は将来性があると考えていると述べている。

 Pureosity チームの今回の開発は、以前(2019年)Nature誌に同グループが発表したプリント技術、Organized Microfibrillation(OM)のプロセスに基づいて開発された。
(詳細は、https://www.icems.kyoto-u.ac.jp)