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理研、小脳の大規模可視化に成功

November, 11, 2021, 和光--理化学研究所(理研)光量子工学研究センター生命光学技術研究チームの道川貴章研究員(同センターアト秒科学研究チーム研究員、脳神経科学研究センター細胞機能探索技術研究チーム研究員)、宮脇敦史チームリーダー(脳神経科学研究センター細胞機能探索技術研究チームチームリーダー、日本医療研究開発機構「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」プロジェクトリーダー)らの共同研究グループは、小脳全体で時々刻々と変化する感覚入力をリアルタイムで表現していることを見いだした。これは従来の考え方を覆す世界で初めての発見である。

研究成果は、運動障害の新たな治療やリハビリテーション法、ブレイン・マシン・インターフェイスや脳型コンピューターの開発への応用が期待できる。

今回、共同研究グループは、蛍光カルシウムセンサータンパク質を全ての小脳プルキンエ細胞に発現する遺伝子組換えマウスと、独自に開発した顕微鏡システムおよび画像解析技術を組み合わせることで、小脳皮質の背側全域を同時に計測可能な実験システムの開発に成功した。この手法を用いて、2万個以上のプルキンエ細胞の複雑スパイクの発火を同時に測定し、これまで計測が難しかった「単一試行における時々刻々と変化する複雑スパイク集団が持つ情報」を定量的に解析した。その結果、小脳には前肢や後肢に個別に対応した領野があるのではなく、「セグメント」と呼ばれる小区域の活動パターンの組み合わせが、全体として身体のさまざまな部位への感覚入力の確率をリアルタイムで表現する、分散型の集団符号化を行っていることが明らかになった。

研究成果は、科学雑誌『Cell Reports』に掲載された。
(詳細は、https://www.riken.jp)