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光でガン細胞を遠隔コントロール

July, 15, 2014, Vienna--オーストリア科学技術研究所(IST)准教授Harald Janovjak氏とウイーン医科大学助教授、Michael Grusch氏は、ガン細胞を光で遠隔制御する研究についてEMBOジャーナルに発表した。この研究成果は、光遺伝学の新分野をガン研究に初めて応用したものである。
 細胞シグナリングの原動力を理解するために研究者は薄膜受容体タンパク質を活性化したり、不活性化したりする必要がある。この受容体タンパク質は、細胞の外側と内側の世界間のリレイとして働くからである。活動は短いタイムスケール(数秒~数分)で、目標とする場所(マイクロメートルからミリメートル)で起こるのが理想的である。しかし、活動でそのレベルの高い精度は、現在の薬理学的方法、遺伝学的方法では達成不可能。光遺伝学は、光を使って細胞活動を制御する。その優位性は、時空の両方で正確に光を適用し、除去することができる点にある。研究グループは、受容体チロシン・キナーゼ(RTK)を再設計して光で制御できるようにした。RTKは、重要な細胞表面受容体であり、成長因子やホルモンを感知する。
 シグナリング分子が細胞表面でRTKとリンクするとき、二量化プロセスで2つのRTKが相互に結びつく。このプロセスが細胞内のシグナリングを活性化する。研究チームは、細胞シグナリングを活性化するほ乳類のRTKのその部分を、光-酸素-電圧-センシングドメインにリンクさせた。このセンシングドメインは、黄-緑藻に研究チームが見つけた可逆的光センサ。改変された受容体では、二量化ステップとそれに続く細胞シグナリングが光によってON/OFFできるようになっている。これは、藻のタンパク質が光を感知して相互に結びつけるためである。ガン細胞では、改変された受容体の活性化が、増えた悪性ガンの細胞形態、増殖、遺伝子発現、特性に変化を起こす。血液細胞では、活性化は、新しい血管形成の典型である、細胞発芽につながる。
 Janovjak氏とGrusch氏によって光活性化二量化を通じて調整されるRTKの開発は、ほ乳類受容体の光活性化二量化の初めての例となる。改変された受容体は、顕微鏡や動物モデルで簡単に実現される光強度によって精密制御できる。新開発の受容体は、ガンと血管内皮細胞の両方で、複雑な細胞プログラムのトリガーとなる。これらの細胞は、新しいモデルを表している。ここでは、振る舞いが光の制御下にあり、またそれは薬剤を特定する新しい方法としても使える。細胞シグナリングの活性化がコントロールされていないことから悪性に結びついてしまうガンとは対照的に、シグナリングの光活性化は変性疾患において細胞生存と機能を回復する。