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CEA-Leti X線フォトンカウンティングディテクタモジュール

November, 19, 2020, Grenoble--CEA-Letiが開発し、Siemens HealthineersのX線スキャナプロトタイプを組みこんだ新しいX線フォトンカウンティングディテクタモジュール(PCDM)が、臨床試験で、CTスキャニングを変革する可能性を示した。これは、空間分解能を高める可能性があり、患者へのX線露光を減らし、画像ノイズやアーティファクトを減らして画像品質を改善し、多数の造影剤を区別できる。

技術提携の初期に、Siemens HealthineersがCEA-Letiに、新世代PCDMの設計、組込、製造とテストを依頼してきた。PCDMは、成熟すると、X線CTスキャナプロトタイプへ組みこむことができる。

カドミウムテルル(CdTe)ベースのX線PCDMsは、高い空間分解能とマルチエネルギー画像の同時取得を可能にする。高い空間分解能は、微小ピクセルサイズを利用することで画像品質を改善するが、画像ノイズは特徴をわかりにくくし、アーチファクトは、それを再現することができる。従来のディテクタのグレーレベル画像と比較して、マルチエネルギーは、カラー画像を供給し、身体に存在する化学元素の原子番号の正確な判定を可能する。

「CEALetiとの早期提携の成功により、Siemens Healthineersは、医療技術会社が全身CTのための未来のディテクタモジュールと見なしているものをプロトタイプすることができた」とCEALeti、医療X線イメージングプロジェクトマネージャ、Jean-Michel Casagrandeは、コメントしている。

X線CTスキャナは、様々な角度から撮った多くのX線計測のコンピュータ処理された組合せを利用して、スキャンされた対象の横断画像を生成する。現在のX線CTスキャナは、間接的変換技術に基づいたエネルギー検出器(EIDs)で画像を生成する。X線フォトンは、まずシンチレータ材料を利用して可視光に変換される。次に可視フォトンが、フォトダイオードを使って電子信号を生成する。一方、PCDMsは、X線フォトンを電子信号に直接変換する。変換収率はもっと高い。

原子番号の精密判定
また、EIDsは、一定時間にピクセルに堆積された総エネルギーを記録するが、エネルギー低いフォトンと高いフォトンの区別をしない。これは、身体の臓器の密度を示すモノクロームX線画像を生成する。PCDMsは、個々のフォトンをカウントし、これは画像のコントラストノイズ比を改善する。また、検出されたフォトンのエネルギー分類を利用して、カラー画像を生成することができる。これは、化学元素の原子番号を正確に決定し、身体に存在する多数の造影剤の区別が可能になる。

最後に、ディテクタモジュールの非常に高い空間分解能は、現在のスキャナ技術よりも、微細構造の鮮明な画像を生成する。例えば、肺の小さな気道、骨梁、冠状動脈ステント細線。

「PCDMsを将来世代X線CTスキャナに組み込むというSiemens Healthineersの考えは新しく、CEA-Letiがこれに取り組み始めた時には利用できる技術は存在しなかった」とCEA-LetiのX線イメージング産業パートナーシップマネージャ、Loick Vergerは、コメントしている。「技術的課題は、途方もなく大きかった。非常に高いカウンティングレートでの低雑音、2つのエネルギー分類、X線CTスキャナに組み込むための十分な成熟である」。

Vergerの説明によると、CEA-Letiは、そのシミュレーションツールを使って、検出機形状を設計し、CdTeベースの半導体を選択し、電子読み出し回路を設計、さらに信頼度の高いCdTe電子アセンブリ技術を提案することができた。

Mayoクリニック評価
米国Mayo Clinicの研究者は、シーメンスHealthineerのフォトンカウンティングディテクタシステムの性能を人体模型、死体、動物、人間で評価した。この技術で作り出した300を超える患者の画像は、この種のディテクタ技術理論的利点が多くの重要な臨床的利点を生み出すことを一貫して証明した」とMayo Clinic医療物理学、バイオメディカルエンジニアリング教授、Cynthia McColloughはコメントしている。

「われわれの研究チームによる発表は、改善された空間分解能、放射能またはヨウ素コントラスト必要線量の低減、画像ノイズとアーチファクトレベルの減少を示した。加えて、それぞれが異なるエネルギースペクトルである、150-µm分解能マルチデータセット同時取得能力が新たな臨床アプリケーションにつながると期待される」(McCollough)。

Mayoチームの最近の発表は、患者にとってのこれら期待される利点の一部を強調している。例えば、2020年の論文は、内耳や周辺の骨の高い空間解像度イメージングで最大85%まで放射線量を低減できることを証明した。
(詳細は、https://www.leti-cea.com)