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TUM、世界最小の超音波ディテクタを開発

September, 24, 2020, Munich--ミュンヘン工科大学(TUM)とHelmholtz Zentrum Münchenの研究者は、世界最小の超音波ディテクタを開発した。それは、シリコンチップ(約3×6㎜)表面に設置した微小光回路をベースにしており、平均的な人毛よりも100倍小さく,以前に可能だったよりも遙かに小さな細部を可視化する。これは、超高分解能イメージンを可能にする。

1950年代に医療用超音波イメージングの開発以来、超音波計測の中心技術は、主に圧電ディテクタの利用に基づいていた。これは、超音波の圧力を電圧に変換する。超音波で達成されるイメージング分解能は、使用される圧電ディテクタのサイズに依存する。サイズを小さくすると、分解能が向上し、より小さく高密度の1Dあるいは2D超音波アレイの製造が可能になる。これにより、組織や材料の特徴の区別向上が可能になる。しかし、圧電ディテクタのサイズがさらに小さなると、その感度は大幅に損なわれる。このため、実用に適さなくなる。

光超音波ディテクタ開発にコンピュータチップ技術
 シリコンフォトニクス技術は、光コンポーネントの微小化に利用されることがある。小さなシリコンチップ表面に高密度集積するためである。シリコンには圧電性はないが、光波長よりも小さな光を捉えられるので、これは微小光回路の開発で広範に利用されている。

TUMとHelmholtz Zentrum Münchenの研究者は、この微小光回路の利点を利用し、世界最小の超音波ディテクタを構築した。シリコン導波路エタロンディテクタ(SWED)。圧電結晶から電圧をとるのではなく、SWEDは、微小光回路を伝搬する光強度の変化をモニタする。

「新しいディテクタは、血液細胞よりも小さい。そのように小さなディテクタが、シリコンフォトニクス技術を利用して、超音波計測に使われたことはなかった。圧電ディテクタをSWEDサイズに縮小できるなら、感度は1億倍低下する」とSWEDの開発者、Rami Shnaidermanはコメントしている。

安価で強力
「新しいディテクタの微小化がどの程度可能か、同時にシリコンフォトニクスを利用して高感度を維持できる程度は信じがたい」とTUMの生体イメージングのチェア、Vasilis Ntziachristos教授はコメントしている。SWEDのサイズは、約1/2 µmである。そのようなサイズは、現在臨床イメージングで利用されている最小の圧電ディテクタよりも、少なくとも10000倍小さなエリアに相当する。SWEDのサイズは、利用される超音波よりも200倍小さい。したがって、1µmよりも小さな特徴を表示できる。これが、超高分解能イメージング可能にしているものである。

シリコンプラットフォームはロバストで製造しやすいので、圧電ディテクタのコストのほんの一部で大量のディテクタを製造できる。つまり量産に適している。このことは、超音波計測をベースにした様々な用途の開発にとって重要である。「われわれは引き続き、この技術のすべてのパラメタの最適化を行う。感度、大きなアレイへのSWEDの集積、ハンドヘルドデバイスや顕微鏡へのそれの応用」とShnaidermanは付け加えている。

さらなる開発とアプリケーション
「そのディテクタは最初、光音響イメージングの性能改善のために開発された。しかし、現在、センサ技術とイメージングの領域で非常に広範なアプリケーションの可能性が見えてきた」とNtziachristosは説明している。

研究チームは、先ず臨床診断と基礎バイオメディカル研究への利用を目標にしているが、この新技術から産業応用領域も利益を得る。イメージングの分解能向上により、組織や材料の超微細部分が探求可能になる。一連の早期研究には、細胞や組織の微小血管の超高分解能光音響イメージングが含まれるが、SWEDは超音波の基本的特性や、以前には可能でないスケールで物質との相互作用の探求にも使える。

(詳細は、https://www.tum.de)