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マウスの脳細胞変化、発達をマッピングする方法を開発

September, 11, 2020, University Park--ペンシルバニア州立大学の研究者は、脳の発達における重要な節目を研究するための新しい方法を開発した。ペンステート神経・行動科学准教授、Yongsoo Kimは、その方法を使って、正常発達マウスと自閉症スペクトラム障害のマウスモデルで、オキシトシン発現がどのように変わるかを理解しようとしている。

その技術により研究者は発達するマウスの脳のマップを作ることができる。これは、様々な領域である細胞タイプがどの程度存在するかを表示できる。また、これは脳における神経発達障害の研究を可能にするための重要な一歩である。

Kimによると、重要な神経接続は、早期発達中に形成される。「われわれは、このマッピング法を適用して、細胞レベルで神経発達障害を理解するために、発達中のマウスの脳で様々な脳細胞タイプの変化を研究することができる」と話している。

Kimと研究チームは、脳が生成する神経伝達物質、オキシトシンが、早期発達中に脳でどのように利用されるかの理解に役立てるためにマップを作成した。以前の研究は、オキシトシンが、社会的行動を調整することを明らかにしたが、脳の神経網全体に及ぶオキシトシンの効果を媒介する受容体が、発達中の脳の様々な部分にどのように存在するかについての情報がない。

研究チームは、個別脳領域が成熟にともない、様々な脳の領域が、オキシトシン受容体(OTR)の異なる発現レベルを持つと仮定した。オキシトシン受容体発現を調べた以前の研究は、脳の選択した領域だけが、部分的に分析できる方法を用いた。Kimの新しい技術は、細胞の解像度でマウスの脳全体をイメージングすることができる。これには、連続2光子顕微鏡とマシンラーニングベースアルゴリズムを用いて、オキシトシン受容体を発現させる蛍光標識されたニューロンを検出する。

 チームは、様々な早期生後発育期、生後7、14、21日と28日からテンプレートを作成した。テンプレートは、脳画像の平均を生成し、重要な生体構造をラベリングすることで作成された。それらは、様々な発達段階で、オキシトシン受容体のイメージング、検出、定量化に役立った。

 Nature Communicationsに発表された研究結果で、研究チームは、OTR発現は、人間の幼児期に匹敵する、生後21日でマウスの脳においてそのピークに達したことを確認した。視床下部のOTR発現は、成人期まで増加を続けた。これは、オキシトシンシグナリングが、性特異性行動で重要な役割を果たす可能性を示している。チームは、オキシトシン受容体を生成できないマウスも研究し、シナプス密度が著しく低減していると指摘している。つまり、オキシトシンは、脳の配線で重要な役割を担うことを示している。

Kimによると、この研究でOTRの研究に利用した同じ方法は、他の脳細胞タイプに適用できる。目的は、時間を通じて空間配列を理解することである。研究チームは、他の研究者がアクセスできるようにその新しい画像をホストし、表示するウエブベースプラットフォームを構築した。

「これらの画像は、脳疾患の様々なマウスモデルでOTR発現を比較するための基本的なベースラインに役立つ。われわれは自閉症のマウスモデルでOTR発現を研究することができ、また、これらの成果に立脚して、多様な脳細胞タイプの機能的、解剖学的変化、さらには遺伝的、環境的要因が幼少期の脳の発達にどのように影響するかを研究する」とKimは話している。
(詳細は、https://news.psu.edu)