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ゴーストイメージング、超解像度顕微鏡を高速化

December, 19, 2019, Washington--中国科学アカデミーの研究チームは、前例のないスピードで超高解像度を達成するために先進的イメージングアプローチを採用した。新しい方法により、生細胞で起こるプロセスの詳細を以前には不可能だったスピードで捉えることができるようになる。

超解像度技術は、ナノスコピーと言われることがあり、光の回折限界を克服することでナノスケール解像度を達成する。ナノスコピーは、細胞内部の個々の分子の画像を取得することができるが、生細胞で使うことは難しい。一つの画像を再構成するには、数100、数1000のイメージングフレームが必要になるからであり、素早く変化する動力学を捉えるには遅すぎる。

Opticaに発表された強いインパクトのある研究では、中国科学アカデミーの研究チームは、ゴーストイメージングとして知られる、これまでにないイメージングアプローチを使ってナノスコピーのイメージングスピードを増強する方法を説明している。その組合せは、従来のナノスコピー技術よりも数桁少ないイメージングフレームを使って、ナノメートル解像度を生み出す。

「われわれのイメージング法は潜在的に、数10ナノメートルの空間分解能で、細胞下の構造で数ミリ秒の時間スケールで起こる動力学をプローブできる。これは生物学的プロセスが起こる時空分解能である」と研究チームのZhongyang Wangは説明している。

イメージング高速化のための統合技術
 その新しいアプローチは、確率的光学再構成顕微鏡(STORM)をベースにしている。これは、2014年ノーベル賞で認められた3つの超解像度技術の一つである。STORMは、光活性化局在性顕微鏡(PALM)と呼ばれることもよくあり、発光(on)とダーク(off)状態間を切り替える蛍光ラベルを使う広視野技術である。数100あるいは数1000のスナップショットを撮ると、各々が所定時間にONになる蛍光ラベルのサブセットを撮ることで、各分子の位置が決まり、それを使って蛍光画像を再構成する。

研究チームは、ゴーストイメージングを利用して、STORMイメージングプロセスをスピードアップする。ゴーストイメージングは、対象と相互作用する光パターンと、相互作用しない参照パターンを関連付けることで画像を形成する。個別には、光パターンは、対象についての意味のある情報は全くもっていない。研究チームは、圧縮イメージングも使う。これは、計算アプローチで、少ない露光でイメージ再構成を可能にする。欠如した情報を埋めるアルゴリズムを使うからである。

「STORMは、低密度蛍光ラベルと多くの画像フレームを必要とするが、われわれのアプローチは、非常に少ないフレームと高密度蛍光色素分子を使い、高解像度画像を作ることができる。また、複雑な照明は全く必要でない。この点は、動的生物プロセスや生細胞に損傷を与える光脱色や光毒性の低減に役立つ」と研究チームのShensheng Hanは説明している。

イメージング効率の改善
その新技術を実装するために研究チームは、ランダム位相変調器として知られる光コンポーネントを利用し、サンプルからの蛍光をランダムスペクルパターンに変えた。この方法で蛍光をコーディングすることにより、非常に高速のCMOSカメラの各ピクセルが、1フレームで対象物全体からの光強度を収集できるようになった。ゴーストイメージングと圧縮イメージングにより画像を形成するために、この光強度を1ステップでリファレンス光パターンと関連付けた。結果は、より効率的な画像取得であり、高解像度のために必要なフレームの数の低減であった。

研究チームは、60-nmリング撮像にそれを使うことでその技術をテストした。新しいナノスコピーアプローチは、わずか10画像フレームを使ってそのリングを解像できた。一方、従来のSTORMアプローチは、同じ結果を達成するために最大4000フレームを必要とした。新しいアプローチは、100画像フレームで40-nmルーラーも解像した。

Wangは「この方法が、この研究で使用したものよりも弱い蛍光を示すものも含め、多様な蛍光サンプルに適用可能とわれわれは考えている」とコメントした。研究チームは、この技術を高速化し、広視野のビデオレートイメージングを達成したいと考えている。また、それを使って3Dおよびカラー画像の取得も計画している。