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NEIのイメージング法、眼の細胞に長寿命パターンを発見

April, 4, 2019, Roborough--網膜色素上皮(RPE)細胞は、独特のパターンを形成する。国立眼病研究所(NEI)の研究者によると、これは眼底のこの重要な組織層における変化の追跡に利用できることが分かった。適応型オプティクスイメージングと蛍光染料を組み合わせ、研究チームは、RPEパターンを使って、健康な被検者と眼病の患者の個々の細胞を追跡した。新たな発見は、RPEに影響する失明に至る病の進行と処置の研究に道を開く。研究成果は、JCI Insight誌に発表された。
 「病院で網膜色素上皮細胞を検査するのは、ブラックボックスを覗き込むようである。RPE細胞は見るのが難しく、病気の兆候が従来技術で検出できるようになるまで、多くの損傷がすでに起こっていることがよくある」と論文の筆頭著者、Johnny Tam, Ph.D.は指摘する。「この研究は、われわれが蛍光染料を使ってRPEのこの独特のフィンガープリントを明らかにし、時間の経過にしたがい組織をモニタできる概念実証である」。
 RPEは、隣接して存在し、眼の感光性光受容体の健康を維持する細胞層である。その細胞は色素を含んでおり、したがって入力光を吸収するので、RPE組織の薄い層は、撮像が難しい。適応光学、眼の個々の細胞を区別できる特殊イメージング技術を使用しても、研究チームはRPE層の可視化が難しいことを確認した。
 したがって、Tamは眼底の血管を可視化するために、FDA認可蛍光染料、インドシアニングリーン(ICG)を使用した。染料は、30分以内に、急速に血管から消え失せるが、染料はRPEでは数時間存続し、蛍光モザイクパターンを明らかにする。ある細胞はより明るく、別の細胞は薄暗く見える。
 「当初、色素がどうのように見えるか分からなかった。染料を入れ、最初はランダムに見えたこのパターンを得た。1年後に戻ってきて、染料を再注入し、同じパターンを見て非常に驚いた」とTamは話している。
 研究チームは、RPEパターンを認識し、次に一つのイメージングセッションから次に起こる変化を計算するソフトウエアを設計した。健康な被検者には、数ヶ月でRPEの変化はほとんどみられなかった。細胞の大半は、安定したICG染色料を維持している。
 この技術が、RPEの初期損傷を検出できるかどうかを見いだすために、研究チームは、眼のその部分に影響を与える症状の人々の目も撮像した。先ず、遅発性網膜変性症(L-ORD)、その病気の後期にRPEに影響を与えると考えられる症状の患者の網膜を撮像した。研究チームは、L-ORD初期の患者にRPEのモザイクパターンは、健康な眼と比べて、ほんのわずかしか安定していないことを確認した。つまり、網膜のわずかなエリアに比較的小さな変化が見られた。
 次に、研究チームは、Bietti常染色体劣性眼病(BCD)、RPE細胞の進行性消失を起こす病気の患者の目を撮像した。ICG染料と適応光学は、BCD患者のRPE細胞が、全ての時点で、健康な細胞と比べて大きく、うまく組織化されていないだけでなく、時間とともにRPEモザイクパターンの変化が急激であることを明らかにした。
 この研究は適応光学を使うが、Tamによると、さらに追加の取り組みとして、このRPEモザイクパターンを従来のイメージング法で撮像することができる。時間とともにこのパターンを可視化できることは、RPE層がどのように変化するかの理解を深めることになり、最終的には、RPE損傷を防ぎ、修復するための新たな処置の開発に役立つ。
 「患者を処置する際、多くの判断がわれわれが見ているものに基づいている。われわれが見えない眼の部分では、われわれは盲目的に扱っていることが多い」とTamは言う。RPEに影響する病気、これは伝統的に撮像することが実際に難しかった。「この技術は、時間経過とともに組織に起こっていることをわれわれに示してくれ、こうした症状に対する新たな処置の開発に役立てることができる」と同氏は付け加えている。