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学習院大学、気管繊毛の高精度測定と光ピンセットによる捕捉に成功

October, 26, 2018, 東京--学習院大学理学部 西坂崇之教授の研究グループは、独自に開発した顕微鏡を用いて、マウスの気管表面の繊毛たった「1本」の動きを高精度・高速度で撮影することに成功した。
 加えて、今年のノーベル物理学賞の対象となった光ピンセットという技術で「繊毛の先端を捕捉」し、人為的な負荷を与えても繊毛が周期的に動き続けることを可視化した。
 この研究成果は、英科学雑誌「Scientific Reports」に原著論文として発表された。

研究成果の要点
・マウス気管繊毛の動きの高精度・高速度3D計測  
 繊毛1本の動きを高精度・高速度でとらえるために、研究チームは、マウスの気管から1本の繊毛を取り出して、先端に目印となる「蛍光を発する微小ビーズ (蛍光ビーズ)」を付着させるという手法をとった。蛍光ビーズは明るく光るため、高い精度で位置を求めることが出来るだけでなく、高速度の撮影をすることが可能になる。

・光ピンセットで繊毛の先端を ”つまむ”
 さらに研究グループは、繊毛の一部分のみに負荷をかける、という特殊な環境下での3次元測定も行った。これには「光ピンセット」技術を利用した。繊毛先端に付着させた蛍光ビーズに400 mWの赤外レーザ光を照射することにより、50 pN程度の負荷をかけることを実現した。光の強さは局所的に太陽光の100兆倍に達し、発生する力は動いている繊毛が溶液を押し出す力の数十倍の強さで、繊毛が動ける範囲を10分の1程度まで制限することができた。これまで、光ピンセットはタンパク質1個から数個に対して用いられてきたものであり、数十万個以上のタンパク質から構成される気管繊毛を捕捉したのは初めてのことである。
(詳細は、http://www.univ.gakushuin.ac.jp/)