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生きた細胞内部の働きをマッピング

colon and brain tumors mice 620

August, 17, 2018, New York--X線やMRIなどのイメージングツールは医学を変えた。医師が、生きて呼吸している人々の脳や他の重要臓器をクローズアップできるようになったからである。コロンビア大学(Columbia University)の研究チームは、個々の細胞内の変化を最高微小スケールで拡大表示する新しい方法を報告している。
 Nature Communicationsに発表された論文によると,ツールは広く使用されている化学トレーサ、D2O、重水と比較的新しいレーザイメージング法、誘導ラマン散乱(SRS)とを組み合わせている。同技術の潜在アプリケーションには、外科医が迅速かつ正確に腫瘍を除去することを助け、頭部外傷、発達障害、代謝異常の検出に役立つことが含まれる。
 コロンビア大学化学教授、研究のシニア筆者、Wei Minは、「われわれはこの技術を使って様々な動物で代謝活動を可視化することができる。どこで、いつ新しいタンパク質、脂質、DNA分子が作られるかを追跡することで、われわれは動物がどのように発達し、老化するか、また怪我や病気の場合、何が悪化するかについて、もっと知ることができる」とコメントしている。
 このブレイクスルーは、重水を化学トレーサとして使用することに関わる。水の水素原子をより重い、重水素と置き換えることで、重水は見た目も味も通常の水であり、少量(人には、テーブルスプーン5程度)なら飲んでも安全である。体内の細胞によって代謝されると、重水は新しく作られるタンパク質、脂質、DNAに組み込まれ、そこで重水素は炭素と化学結合する。
 これらの炭素-重水素結合に光を当てると、それは変動する周波数で振動することが分かった。これにより、各マクロ分子がタンパク質、脂質あるいはDNAとして判断される。この周波数シグネイチャから、動物の脳、皮膚、内蔵および他の臓器における新しいタンパク質、脂質、DNAの成長を追跡することができる。
 重水はすでに、代謝変化を追跡するためにタンパク質や脂質のラベリングに使用されており、分析は現在質量分析計、身体から取り出した細胞で行われている。この方法により今度は,リアルタイム、リアル空間で、サブセル変化を可視化することができる。「われわれは、生きた動物の細胞内で起こっていることを連続画像で撮ることができる。以前は、スナップショットしか撮れなかった」と研究の共著者、Lingyan Shiは話している。
 研究では、通常の水をD2Oで薄め、それを線虫、ネズミ、ゼブラフィッシュの胚に飲ませた。様々な組織にSRSレーザ当て、新しい重水素タグのタンパク質、脂質、DNAが増大するのを数時間、数日観察した。、
 一つの実験で、明るい線がマウスの急成長する脳腫瘍と結腸腫瘍に現れるのを観察した。ガン細胞が分割すると、新たに作られたタンパク質と脂質に、より多くの重水素が組み込まれた。「この方法は、健全組織とガン組織との間に明確な線を作るので、腫瘍除去が著しく容易である」とShiは話している。
 実験から、細胞の発達と老化について新たな洞察が得られた。
・線虫では、老化にともない、虫の生殖器系で脂肪生産の盛衰が観察された。脂肪は虫の卵の成熟を助ける。この追加脂肪がもはや役に立たないとなると脂肪の形成が低下することが分かった。また、年老いた虫の身体で新しいタンパク質の塊の形成が見られた。重水素ラベルSRSイメージングを使ってタンパク質の積層を追跡し、老化関連の病気を観察することを研究チームは提案している。
・赤ん坊のネズミの脳の発達では、絶縁脂肪層、ミエリン鞘が各細胞の周りに形成されることを観察した。リアルタイムでそのプロセスを観察すると、重水素ラベルSRSイメージングを使い、子供の脳が正常に発達しているか、あるいは多数の硬化を患っている患者が回復しつつあるかどうかを研究者は知ることができる。硬化とは、人の脳のミエリンを攻撃し、情報の流れを破壊する病気。
・ネズミの汗腺細胞では、汗腺の外縁の細胞に新しい脂質が形成されると、旧い細胞を内側に押し込むことを観察した。その旧い細胞が最終的に汗腺の中央に達すると、それらは死んで、皮膚や髪の毛を湿らせるプロセスで放出される。
 コロンビア大学化学教授、Eric Potmaは、「このマッピング法の素晴らしさは簡素であることだ。一見、最小の努力で組織の代謝活動の生き生きとした画像を生成する。SRS顕微鏡は継続的に小型化するので、重水素ラベルSRSイメージングは、もっと早期に腫瘍把握に役立つだろう」とコメントしている。
(詳細は、www.columbia.edu)