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RUB研究者、創薬の新方法に赤外センサ利用

July, 31, 2018, Bochum--Ruhr-Universität Bochum (RUB)の生物物理学者は、赤外センサを使い、どの活性薬剤がタンパク質の構造に作用を及ぼすか、また、その効果の持続時間を迅速かつ容易に分析することに成功した。Dr Klaus GerwertとDr Jörn Güldenhauptは、活性薬剤によって開始される、タンパク質スカフォールド構造の変化の時間分解計測を行った。研究チームの方法は、いずれ、副作用がない薬剤の、迅速かつ目標を定めた、開発に役立つ。研究チームは、Angewandte Chemieに研究成果を発表した。

活性薬剤は標的タンパク質の構造を変えることができる
 多くの薬剤の効き目は、特定タンパク質の活動を抑制することで細胞の代謝を操作することに基づいている。この目的のために、薬剤分子は個別のターゲットタンパク質と結びつかねばならない、一方、活性薬剤は、たいてい、一般にパウチのような孔になっている、タンパク質の機能区分に落ち着く。
 ある活性薬剤の場合、目標タンパク質と結合することによって、タンパク質表面の構造を変える。いわゆる構造的変化に続いて、新たな表面領域と結合パウチが利用可能になり、活性薬剤は、それらと調和するようにさらに適合化が促進される。このプロセスは、活性剤の選択性改善となることがあり、したがって副作用が減る。

新たな方法が迅速計測を容易にする
 「活性薬剤が目標タンパク質の構造に影響を与える方法は、これまで時間のかかる材料集約的方法を用いて分析されていた。これは非常に詳細な空間情報を提供するかも知れないが、数週間あるいは数ヶ月後まで結果が得られない」とJörn Güldenhauptは説明している。
 ボフムの研究チームが開発した新しい方法は、数分で構造的変化についての情報を提供する。また、構造的変化のタイプの絞り込みさえできる。センサは、赤外光を透過させる結晶に基づいており、タンパク質は、その表面に接している。赤外スペクトルが結晶を通して記録され、その表面は活性薬剤溶液、あるいは活性薬剤なしの溶液で洗い流される。センサは、構造に感度があるタンパク質のスペクトル領域、つまり真ん中の領域で、タンパク質スカフォールドの特性の変化を検出する。何らかの変化が起こると、活性薬剤がタンパク質の形状を変えたことは明らかである。

熱ショックタンパク質
 Merck社との協力で研究チームは、2つの異なる活性薬剤グループが熱ショックタンパク質HSP90に影響を及ぼす方法を分析することでこの方法の信頼性を実証した。それはフォールディングヘルパー(folding helper)であり、細胞の新生タンパク質が正しい3D構造を形成するのを支援する。それは、極めて活発な代謝であるので、腫瘍細胞はそれを緊急に必要としている。HSP90抑制活性薬剤は、腫瘍の成長を阻止する薬剤の開発へのアプローチを構成する。

結合期間が薬剤導入頻度を決める
 薬剤分子が標的タンパク質から離れる率は、体内での薬剤の有効性に対応している。高複合寿命の活性薬剤は、目標タンパク質に長期間結合しており、したがって効果が長続きする。そのような活性薬剤を含む錠剤は、例えば、1日に一度とればよく、副作用はほとんどない。「われわれのセンサは、フローシステムのように動作するので、結合後に標的タンパク質から活性薬剤を洗い流すことができる。その結果、時間経過とともに効果の変化を計測することができる」とKlaus Gerwertは説明している。
(詳細は、www.rub.de)