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高速道路走行中の脳活動可視化に成功

March, 28, 2014, 名古屋--中日本高速道路と共同研究者、東京大学生産技術研究所の須田義大教授は、脳機能近赤外線分析測定法(fNIRS/エフニルス:functional near-infrared spectroscopy)(注1)装置を車両に搭載し、高速道路を走行する運転手の脳活動の可視化に世界で初めて成功した。
これまで交通安全対策の評価は、運転後に自分の行動を顧みて記入するアンケートなどの結果を用いていたが、この方法では記憶の誤りや思い込みが避けられないなど課題があった。 また、脳活動の可視化は、実験設備などの制約により室内で行うのが主流であり、運転に関する研究もドライビング・シミュレータに依存していた。
今回の可視化成功は、高速道路走行時の運転者の脳にかかる生理的負担の把握を可能にし、それにより交通事故を引き起こす要因や交通安全対策の効果を把握することができる。この技術を活用し、たとえば、目に入りやすく分かりやすい標識や情報板、道路脇に設置した発光機器の点滅制御(ベクション)(注2)を用いた、上り坂での速度低下を防ぐ渋滞対策や速度を抑制させる交通安全対策などを客観的に評価することができ、より効果の高い施策の実施が可能となる。
今後、同高速道路は有識者を交えた「交通情報サービス研究会 脳科学作業部会」を設置し、この成果をもとに、脳科学の視点から、より効果的な交通安全対策の考案など、安全で走りやすい高速道路を目指して研究を進めていく。

(注1)脳機能近赤外線分析測定法(fNIRS):脳機能画像法の一つで、装置が小型軽量で、移動可能で、被験者が体を動かしながら脳機能を計測できる測定方法。体を動かす運動に伴う脳循環代謝の解析ができる。研究では、脳血流量だけでなく、脳酸素消費の変化を、同時に計測し、運転者の脳活動を多面的に画像化することにも成功している。

(注2)速度感覚コントロールシステム(ベクション) : 道路脇に設置した発光体の光の流れる速度を制御し、ドライバーの速度感覚をコントロールすることで、長い下り坂での速度の出し過ぎ防止や上り坂・サグ(下り坂から上り坂にさしかかる凹部)での速度の回復を促し、安全で快適な走行をサポートする。