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光誘導ナノ粒子、転移性ガン治療に有望

February, 1, 2018, St. Louis--セントルイスのワシントン大学医科(Washington University School of Medicine)の研究チームによると、新しい抗ガン戦略は、精密兵器として光を使う。従来の光線療法、皮膚や内視鏡でアクセスできる領域に限られる光線療法と違い、新技術は体内深くに広がっているガン細胞を標的にして攻撃する。
 新しい研究によると、転移性腫瘍を発見するために、従来のガンイメージング技術の一部として放射される光も感光性薬剤を始動させることができる。さらに、そのような薬剤がナノ粒子にパッケージングされて、ガン細胞を狙って照射されると、感光性薬剤は、腫瘍細胞を殺す毒性フリーラジカルを生成することが研究で示されている。研究チームによると、この技術は、白血球細胞のガン、多発性骨髄腫、また悪性の転移乳ガンのマウスで効果的に働いた。
 研究成果は、Nature Communicationsに発表された。
 「広がったガンは、患者死亡の主因である。われわれの研究から、この光線量法技術は特に、骨髄深部も含め、身体の様々な部分に広がっている小さな腫瘍を攻撃するのに適している」とシニアオーサ、Samuel Achilefuは説明している。
 この技術は、チタノセンという化学療法薬剤を利用する。化学療法薬剤だけでは、チタノセンは、比較的高用量でも、治験では十分に効果がなかった。しかし、可視光照射を受けることにより、チタノセンは、低用量でも、細胞に対して毒性を持つ反応性粒子を生成する。
 研究チームは、低用量チタノセンをナノ粒子内に収めた。ナノ粒子はガン細胞表面にあるタンパク質を標的にしている。ナノ粒子がガン細胞と接触すると、膜もいっしょに溶け、チタノセンがガン細胞内に放出されることが確認された。
 研究チームは次に、一般的なガンイメージング薬剤、フルオロデオキシグルコース(FDG)、一種の糖を供給する。エネルギー不足のガン細胞は、FDGを効率で摂取し、PETスキャンで腫瘍が光る。この輝きもチタノセンを始動させ、フリーラジカルを放出させてガン細胞を殺す。
 チタノセンと発光FDGは、同時に腫瘍の同じ場所を標的にしているので、その技術は、標準的な照射や化学療法よりも毒性が低いと考えられている。研究では、身体は肝臓を通してチタノセンから抜け出し、一方FDGは腎臓を通して放出されることが分かっている。2つの成分が別々に捨てられることで、他の器官への障害は最小化される。分けられることで、2つの成分は毒性を失うと研究者は言う。
 多発性骨髄腫を持つマウスをこの戦略を用いて週に一度、4週間治療した。次の週には、治療を受けたマウスは腫瘍が著しく縮小しており、コントロールマウスよりも長生きした。処置されたマウスの50%は、少なくとも90日生きた。コントロールマウスでは、50%が62日生きた。乳ガンのマウスでも、この戦略を用いて処置することで、抗ガン効果が認められた。しかし、多発性骨髄腫を持つマウスよりも効果的かどうかははっきりしない。研究チームによると、乳ガン細胞株は悪性が強いためと考えられる。
 研究チームは、ある種の多発性骨髄腫はこの技術に耐性があることも確認した。耐性のある多発性骨髄腫細胞は、チタノセン収容ナノ粒子の標的に使う表面タンパク質が欠如していることを研究チームは見つけ出した。
 Achilefuは、「次には、最初の戦略に反応した骨髄細胞とともに、これらの耐性のある細胞を標的にして殺すために別の表面タンパク質を正確に狙えるかどうかを確認したい、これにより完全寛解に行き着ける」とコメントしている。
 同氏は、医者は、いずれこの種の技術を使ってガンの再発を防ぐことができるようになる、と考えている。
(詳細は、www.medicine.wustl.edu)