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新イメージングアプローチでアルツハイマーマウスの脳全体の変化を明らかに

November, 6, 2017, Washington--推定550万人のアメリカ人がアルツハイマー病に罹って生活している。アルツハイマー病は、記憶、思考、行動に問題を起こす痴呆症タイプの一つ。処置は兆候の悪化を遅らせることはできるが、治療薬や予防薬が開発できるように研究者は今でも、その神経変性疾患の理解向上に取り組んでいる。新しいイメージングシステムは、その病気のマウスモデルで、アルツハイマーを示す脳の変化をモニタする、より優れた方法を提供することで新薬開発促進に貢献する。
 アルツハイマー病の特徴が出るように遺伝子組換えされているマウスは、その病気の生物学、新薬試験の研究には貴重なツールである。その病気の人と同様にマウスの脳は、老人斑として知られるタンパク質の塊を蓄積する。中国、華中科技大学Qingming Luoの全脳網可視化(Visible Brain-wide Networks)チームは、マウスの脳全体でこれら老人斑のイメージングを改善する低温微小光学断層撮影法(cryo-MOST)システムを開発した。
 研究チームのJing Yuan氏は、「マウスの脳全体の老人斑分布を研究することで、アルツハイマー病の進行中に脳機能がどのように劣化するかの理解が容易になる。cryo-MOSTがアルツハイマー病治療の開発と評価を加速すると期待している」とコメントしている。 
 Optics Lettersに発表された論文で研究チームは、cryo-MOSTシステムの詳細を明らかにしている。またそのシステムを利用して、アルツハイマー病のマウスモデルの脳全体の老人斑の3D、ミクロンレベル分解能のマップ作成結果を報告している。新システムは、従来のアプローチに比べて簡便で効率的であり、外部の染色やラベルは不要である。また、それは光学的であるので、MRIやPETなど他のイメージング技術と比べて、より詳細な情報を提供する。
 cryo-MOSTにはラベルは不要。励起光暴露後の老年斑の、自家蛍光として知られる特徴、自然蛍光を利用するからである。研究チームは、組織の温度を-100℃以下に下げることで老人斑からの自家蛍光を光らせること、結果としての画像改善ができることを発見した。
 「外因的染色は、曖昧な、擬陽性あるいは脳組織のむらのあるラベリングとなるかも知れない。これはアルツハイマー病の真の病理学的構造変化の観察を邪魔する。われわれのラベルフリーアプローチは、こうした問題を回避し、同時にサンプルの準備を簡単にし、従って研究プロセスを加速する」とYuanは説明している。
 蛍光の強化に必要な超低温を維持するために研究チームは、液体窒素に浸したサンプルのイメージングができるシステムを作製した。従来の光学顕微鏡は組織の表面を撮像できるだけであるので、表面を撮像するたびに組織の層を除去する機械的フライス盤を組み込んでいた。マウスの脳全体を撮像する際、サンプルを動かすために移動ステージを使うことで同システムは自動的にフライス加工とイメージングを交互に行う。
 老人斑の脳全体への分布を撮像するcryo-MOSTの能力を実証するために、研究チームは、それを使って、アルツハイマー病の17ヶ月APP/PS1マウスモデルから脳全体を撮像した。
「老化したアルツハイマー病マウスの画像は、老年斑が脳全体に広がっていることを明らかにした。これは、その病気が記憶と知性に損傷を起こすだけでなく、他の脳機能全般の劣化も起こすことも示唆している」とYuanは話している。
 論文に発表されたシステムは、波長536nmで蛍光を検出するとき、横方向分解能1.072µm、軸方向分解能17.152µm。研究者によると、より優れた顕微鏡を使うことでこのパラメータはさらに改善できる。
 撮像した組織のサイズが移動ステージの最大移動範囲に制約さるだけなので、死んだドナーの人の脳の研究用に使用できる。また、他の臓器で自己蛍光を発する他の生体分子の可視化にも有用である。たとえば、腎臓や肝臓などの臓器で代謝分布の撮像もできる。