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ナノファイバで細胞の力を感じ、音を聞く

May, 22, 2017, San Diego--カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の研究チームは、泳ぐバクテリアが生成する力を感じ、細胞の心筋細胞の鼓動を聞くことができる感度を持つ微小デバイスを開発した。
 デバイスはナノサイズの光ファイバで、ヘリコバクタピロリ菌を含む溶液内に入れると、160フェムトニュートン(約1/10兆ニュートン)までの力を検出できる。ヘリコバクタピロリ菌は、内蔵で泳いでいるのが見つかるバクテリア。マウスの鼓動する心筋細胞の培養では、そのナノファイバは-30dBまでの音を検出できる、これは人の耳の限界よりも1000倍下のレベル。
 UCSDのDonald Sirbulyナノエンジニアリング教授の考えるアプリケーションに含まれるのは、単一バクテリアの存在と活動の検出、結合の形成と解除のモニタリング、細胞の機械的挙動における変化のセンシング、これは癌になる兆候、ウイルスの攻撃を受けている可能性がある。あるいは、体内の細胞音響学をモニタする微小聴診器。
 研究チームが開発した光ファイバは、AFMと比較して少なくとも10倍高感度である。それに、AFMsは大型の機器であるが、この光ファイバは直径がわずか数100nm。「それは光ピンセットの感度を持つミニAFMである」とSirbulyはコメントしている。
 デバイスは二酸化スズの極細ファイバでできており、ポリエチレングリコールというポリマの薄い層で被覆され、金のナノ粒子がちりばめられている。そのデバイスを使うには、研究者はそのナノ光ファイバを細胞溶液に浸し光ビームをファイバに送って、それが出す光信号を解析する。この信号は、その強度に基づいて、ファイバが周辺細胞からどの程度の力、あるいは音を拾っているかを示している。
「われわれはこれらの小さな力や音を拾えるだけでなく、このデバイスを使ってそれらを定量化できる。これは、高分解能ナノメカニカルブロービングのための新しいツールである」とSirbulyは言う。
 デバイスの動作は以下のようになる。光が光ファイバを伝搬すると、光は金のナノ粒子と強く相互作用する。次に光を、通常の顕微鏡で見える信号として散乱させる。この光信号が特殊な強度で現れる。しかし、ファイバが生細胞を含む溶液の中に浸されると、その強度は変わる。細胞からの力と音波が金のナノ粒子にあたり、ナノ粒子をポリマ層に押し込む。ポリマ層は、ナノ粒子をファイバ表面から分離する。ナノ粒子をさらにファイバに近づけると、ナノ粒子はファイバからの光と一層強く相互作用する。これにより光信号の強度が増す。研究チームは、信号強度が力または音の異なるレベルに一致するようにデバイスを調整した。
 この研究の要諦は、ファイバのポリマ層である。ポリマ層はスプリングマットレスのように働く、細胞が作り出す微妙な力と音波に圧縮され、厚さの違いに十分な感度がある。ポリマ層は調整可能であり、もっと大きな力を計測したいなら、もっと硬いポリマ被覆を使うことができる。感度を高めるには、ハイドロゲルのようなもっと柔らかなポリマを使うことができる。
 次は、単一細胞の生物活動や機械的挙動の計測にナノファイバを使用する計画である。今後の研究には、ファイバの「聞き取る」能力の改善が含まれている。これによって超高感度生体聴診器が実現する。また、新しいイメージング技術の開発にその音響応答を利用する。