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皮膚を通して蛍光色素を計測できるウェアラブル顕微鏡を設計

September, 30, 2016, Los Angles--UCLAの研究チームは、皮膚内部の蛍光バイオマーカーを高感度に検出、モニタできるモバイル顕微鏡を設計した。これは、医療診断や治療で様々な生物化学反応を追跡する重要なツールになる。
 この新しいシステムの重量は1ポンドの1/10以下で、身体の上腕二頭筋に着けられる程度に小さく軽量である。将来的には、このような技術が家庭や診療現場(POC)設定で連続的な患者モニタリングに使用できるようになる。
 蛍光バイオマーカーは、ガン検出や薬剤送達、リリースなど、医療治療で通常用いられている。最近では、生体適合蛍光染料が登場しており、皮膚を通したバイオマーカーの非侵襲センシングや計測で新たな機会が出ている。
 しかし、皮下に人工的に追加された蛍光物質を検出することは難しい。コラーゲン、メラニン、他の生体構造が、自家蛍光というプロセスで自然光を発するからである。多様なセンシングシステムを使用してこの問題を研究するために様々な方法が試みられてきた。ほとんどは高価であり、ウェアラブルイメージングシステムに使用できるほどに小さく、コスト効果が優れているものは実現困難である。
 モバイル顕微鏡をテストするために研究チームはまず、組織ファントムを設計した。これは人工的に作製された物質で、自家蛍光、吸収、散乱などの人の皮膚の特性を真似ている。ターゲット蛍光染料ソリューションを1マイクロリットルの1/100程度をマイクロウエルに注入し、続いて表面から0.5~2㎜の組織ファントムにインプラントした。これは、実際に血液や他の組織体液に届く程度の深さである。
 蛍光染料を計測するために、Aydogan Ozcanのチームが作製したウェアラブル顕微鏡は、斜めから皮膚にレーザを照射する。皮膚表面の蛍光画像をウェアラブル顕微鏡で捕らえる。画像は、コンピュータにアップロードされ、そこで特注設計アルゴリズムを用いて処理され、ターゲット蛍光シグナルが皮膚の自家蛍光からデジタル的に分離された。10億分の1の検出感度であった。
「様々な微小バイオセンサを皮膚内部に並存させ、われわれのイメージングシステムを利用して、それらを区別することができる。皮膚内部に並行して埋め込んだこれら全てのセンサをモニタすることができる。ウェアラブルイメージャの潜在的な不整合でさえ理解し、それを修正して連続的にバイオマーカーのパネルを定量化できる」とOzcanは話している。
 このコンピュータイメージングフレームワークは将来的には、埋め込み可能、注入可能な蛍光染料を用い、皮膚を通して様々な慢性疾患を連続的にモニタすることもできるようになる。