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新イメージング法、DNAの詳細をナノスケールで明らかに

June, 24, 2016, Washington--スタンフォード大学の研究チームは、ナノスケールで個々のDNA鎖の構造をプローブできる新しい強化版DNAイメージング技術を開発した。
 DNAは、多くの疾病過程の起源にあるので、DNAが損傷を受けたり他の細胞過程が遺伝子発現に影響を与える時に、この技術は何が問題であるかを研究者が洞察する際に重要な役割を果たす。
 新しいイメージング法は、単一分子顕微鏡という技術をベースにしており、DNA鎖に付けた蛍光染料の方向や動きについての情報を追加している。単一分子顕微鏡は、スタンフォード大学のW.E. Moernerが創始者。
 DNA鎖は非常に長く細い紐状(ストリング)で、わずか数ナノメートル径である。DNAに付けた蛍光染料と単一分子顕微鏡を使うと、この微小ストリングがよく見えるようになる。これまで、そうした染料を正しい位置に付けることは難しく、蛍光染料がしっかりと付いているか、ある程度ゆるくついているかどうかは分からなかった。
 論文の筆頭著者、Adam S. Backerは、数千の単一分子から方向と回転力学を同時に捉える極めて簡単な方法を開発した。「新しいイメージング技術は、DNAをラベル付けしている個々の蛍光分子が、ずっと大きなDNA構造に対してどのように整列しているかを調べる。また、これらの分子が相互にどの程度ぐらついているかを計測し、これによってこの分子が1つの特定アライメントでスタックしているか、われわれの計測シーケンスでバタついているかどうかを知ることができる」。
 この新技術は、分子群の位置を平均化する現在のいわゆる「アンサンブル」法よりもはるかに詳細な情報を提供し、一度に1分子しか解析できない共焦点顕微鏡よりもはるかに高速である。新技術は、比較的不鮮明な分子にも使用可能である。
 新技術は、DNAそのもののナノスケール情報を提供するので、DNAの構造変化、色素分子の変化として現れるDNAの特定領域に対する損傷のモニタリングにも有用である。また、多くの細胞プロセスを促進する、DNAとタンパク質との相互作用のモニタにも使用可能である。
 論文では、研究チームは、25nm程度の空間分解能、5°程度の精度の単一分子方向性計測を実証した。また、分何時分子の回転力学を約20°の精度で計測した。、

新技術の仕組み
 単一分子位置情報を得るために、研究チームは、電気光変調器(EOM)という光学素子を単一分子顕微鏡に追加する既知の技術を用いた。個々のカメラフレームで、このデバイスはすべての蛍光染料を照射するために用いられるレーザ光の偏向を変えた。
 方向性を持つ蛍光染料はレーザ光の偏向に密着整列されていて、最高輝度となるので、各カメラフレームで個々の分子の輝度を計測することで研究者は分子ごとに方向と回転力学を定量化することができる。連続フレームにおいて明、暗が切り替わることは、特定の方向で厳密に定まっており、それに対して、連続フレームで明るく見える分子は、その方向が厳密に定まっていなかった。
 Backerによると、単一分子顕微鏡さえあればだれでも簡単にEOMを追加して同様の技術を実行できる。「われわれは、極めて標準的なツールを、わずかに違った仕方で使い、追加の生物学的、物理学的洞察を得るための新しい方法でデータを分析した」と同氏はコメントしている。