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強力プリズムデバイスで片側視野欠損患者の視野を拡大

June, 7, 2016, Boston--マサチューセッツのシェッペンス・眼研究所(Schepens Eye Research Institute of Massachusetts Eye and Ear)と、ハーバード医科大学(Harvard Medical School)の研究グループは、ハイパワー(強力)プリズムを使用して片側視野欠損患者の視野を最適に拡大する3つの新しいメガネを設計した。
 両目の視野の左半分または右半分が弱くなる片側視野欠損患者は米国に100万人以上いる。その一般的な原因は、脳卒中、脳腫瘍、頭部外傷である。片側視野欠損では、自然の視野約180°がわずか90°に減少する。患者は、見えない方の危険物の発見が難しく、衝突、転倒、その他の事故につながる。また、患者は、車の運転に120°の視野が求められるマサチューセッツ州では、法律上、車の運転ができない。
 片側視野欠損の治療法の1つは、メガネにマウント、または埋め込んだプリズムで視野を拡張することである。研究グループは、このような患者のために15年以上前から視野拡大プリズムデバイスを開発している。2013年に発表されたものが商用化されており、見えない方の視野を見える側に光学的にシフトすることで、片側視野欠損患者の視野が30°拡大することが明らかになっている。
 見えない側の視野をさらに拡大することを目標に研究グループは、新たな光学技術を研究している。これは、従来のプリズムの30°限界よりもさらに光を曲げるように設計された強力イメージシフトデバイス。従来のプリズムでは、角度の増加が結果的に光を曲げてプリズムに戻る、「全反射」を利用している。
 ハーバード医科大学Dr. Eli Peliは、「必要なのは、もっと見えるようにするための光の高角度シフトだけではない。患者が両方向にスキャンしたときに視野の範囲がさらに広がる新しいデバイスが必要だ。現在のプリズムデバイスは、見える側にスキャンした時にしかそのような柔軟性はサポートされない」とコメントしている。
 プリズムパワー付メガネレンズの現在のプリズムを反対側に埋め込むことによって、画像シフト効果は両方のプリズムタイプの能力の合計として増える。このデザインにより、患者の見えない方の視野は最大36°拡大し、見えない側に5°のスキャニング範囲が増える。
 ペリフェラルプリズムの能力を高めるために、バイパート・ダブルフレネルプリズムは、2つのプリズムセグメントを互いに傾斜するように結合している。この設計により、患者の見えない側の視野が最大43°拡大し、見えない側のスキャニング範囲が14°増加する。
 第3のアプローチは、一対の角度付ミラーを使って見えない側からの画像を見える側に回折する、プリズム補正のようなものである。ミラーベースの設計であるため、このデバイスは歪がなく、画像の鮮明さが落ちるプリズムの色分割効果の影響を受けない。患者の見えない側の視覚は最大40°拡大し、スキャニング範囲はもっと広がる可能性がある。
 研究チームは、設計を完成させ、ミラーベースのぺリスコピックプリズムを実装する考えであり、また3つの設計全ての患者テストも開始する。