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EPFL、分子検出にクモの糸を利用

January, 15, 2016, Ecublens--EPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)のファイバオプティクスグループ教授、Luc Thévenazは、従来のガラス製ファイバから、関心をクモの巣の糸に向けた。
 クモの糸は完全円筒形、滑らかで透明であり、非常に丈夫である、ガラスベースのファイバと同じ特性もある。
 しかし1つ大きな違いがある。ガラスは不活性であるが、クモの糸はヘリカル構造に巻かれた非常に長いタンパク質でできており、その接着剤(ボンド)は多くの化学物質に対して感度がある。
 Dr. Thévenazによると、クモの糸のへリックスは、酢酸やアンモニアのような極性分子がボンドと接触するときはいつでもほどける。「これによってクモの糸の光伝導の仕方がわずかに変わるので、われわれは化学センサを作るためにそれを利用することを思いついた」。
 研究チームは、別の優れた特性も発見した。へリックス構造の変化は完全に可逆的であった。「テストすべき物質と反応する目的で分子を加えて、糸を作る可能性に注目している。それはガラスファイバではできないことが多い。ガラスは引き延ばすためには1000℃以上に加熱しなければならないからである」と同氏は説明している。また、クモの糸は生体分解性であるので、生体インプラントに適している。後で除去する必要がないからである。
 EPFLの博士課程学生、Desmond ChowとポスドクKenny Hey Towは直径5µmの自然のシルクストランド(クモの糸)に取り組んでいる。これはオクスフォード大学動物学部でオーストラリアNephila edulisクモが作ったものであるが、高価である上、実際のクモの糸のようには機能しない。
 研究チームは、それを小さなブラケットで引っ張って伸ばし、片端にレーザビームを照射した。他端で、偏向アナライザを用いて伝搬する光の微小変化を計測する。糸と相互作用する気体が存在するなら、デバイスはそれを直ちに検出する。
 この研究はまだ初期段階にあるが、すでにファイバオプティクスの専門家の想像を掻き立てている。